研究課題
転写因子のクロマチン上にある標的遺伝子への結合制御は細胞の運命決定に重要なステップであり、その過程に必須な転写制御領域のクロマチン構造変換機構の解析が、エピジェネティック制御を理解する上でも重要な課題の一つである。この観点から初年度に樹立したステロイドレセプター(GR)の標的配列(MMTV-LTR)を直列に複数コピーゲノム上に有したMMTVアレイ細胞株を使用し、核内受容体およびARIP4の動態観察を行うとともに、MMTVアレイのクロマチン構造の変化を解析した。その結果、ホルモン非添加でARIP4は核内にドット上の局在を示し核内の特定の構造体に局在しているが、ホルモン添加によってその構造体から速やかに解離した後、MMTVアレイ上に局在するのが観察された。このときMMTVアレイでは活性化ヒストンマーカーであるヒストンH3のK27がアセチル化されており、ARIP4が活性型クロマチンにリクルートされることが明らかとなった。またホルモン刺激前の状態でARIP4が局在している領域を調べるために、核内でドットパターンを形成する幾つかの因子との共局在を調べたところ、白血病病因因子であるPMLと局在が一致することが判明した。PML はSUMOタンパク質およびSUMO化されたタンパク質を集結させる能力があることから、SUMO化修飾特異的に核内受容体に結合するARIP4がなんらかのSUMO化を認識してPML上に局在する可能性が考えられた。以上の結果からMMTVアレイは細胞核内で正常に染色体に組み込まれており、そのクロマチン構造変換の為にARIP4の核内局在変化が厳密に制御されていることが明らかとなった。本研究成果は今後クロマチン構造変化と核内構造との相互作用を解明する手掛かりとなる。さらに樹立したMMTVアレイシステムは新規ステロイド薬剤スクリーニングに非常に有用で社会的な貢献度も高い。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Nature Communication
巻: 5 ページ: .
10.1038
PLoS ONE
巻: 8 ページ: .
10.1371