研究課題/領域番号 |
23570222
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
森安 裕二 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20200454)
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研究分担者 |
金子 康子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30194921)
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キーワード | オートファジー / 液胞形成 / シロイヌナズナ / 細胞成長 / ミニプロトプラスト / 根伸長 |
研究概要 |
1. ミニプロトプラストを調製する技術を整備した。オートファゴソームのマーカータンパク質であるGFP-Atg8タンパク質を恒常的に発現するタバコ培養細胞より調製したミニプロトプラストにおける液胞形成の過程を観察した。この過程ではオートファゴソームがまれではあるが観察された。膜透過性システインプロテアーゼ阻害剤E-64dで処理すると形成される液胞には細胞質未分解物が蓄積していた、すなわち、液胞はオートファジーを行いながら形成されることが確認された。このとき、オートファジー阻害剤3-メチルアデニンで処理すると、オートファオゴソームは見られなくなったが、形成される液胞内への細胞質未分解物の蓄積は起こった。すなわち、液胞は3-メチルアデニンに非感受性のオートファジーにより形成されることが示唆された。 2.シロイヌナズナの野生株(WT)とATG5遺伝子が破壊されたatg5株の芽生えより根端 5 mmを切り取り、3%ショ糖を含む1/2MS培地で23℃、1日間培養した。WTの根は 2.9 mm伸びたのに対し、atg5株が2.0-2.1 mmしか伸びず、WTとatg5株の間には統計学的に有意な差があった。培養1日後の根断片の細胞を明視野顕微鏡で観察すると、atg5株はWTに比べて、根端から約 400 µm以降の表皮細胞が小さかった。ヨウ化プロピジウムで細胞壁を蛍光染色して根冠に隠れた細胞を観察すると、根端から 100-300 µmの伸長領域の表皮細胞においても atg5株はWTより細胞が小さいことが分かった。さらに、ショ糖を含まない培地で培養するとオートファジーはさらに活性化し、ショ糖を含む培地で培養したときよりもWTとatg5株で細胞の大きさの差がより開いた。以上の結果はオートファジーが根の細胞伸長に寄与することを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミニプロトプラストを用いた液胞形成の解析に関しては、計画していたほとんどのオルガネラマーカーの導入が終わった。さらに、ミニプロトプラストが効率的に調製できるようになった。シロイヌナズナ根を用いた液胞の形成・拡大の解析に関しては、計画していた実験をほとんど終了した。タバコ液胞拡大モデルを用いた液胞の拡大に解析に関しては、前年度にほぼ計画を達成しており、今年度は実験を実施しなかった。 以上、計画のほとんどを達成できたので、このように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ミニプロトプラストを用いた液胞形成の解析に関して。様々なオルガネラマーカータンパク質を発現するタバコ培養細胞から調製したミニプロトプラストを用いて、液胞形成の過程とオルガネラの関係を解析していく。さらに、生物材料としてヒメツリガネゴケを加える。ヒメツリガネゴケではオートファジー関連遺伝子ATG5をノックアウトした株(atg5株)をすでに得ており、atg5株と野生株の原糸体より調製したミニプロトプラストを用いて、タバコ細胞と同様の実験を行なうことで、液胞形成に伴う新奇のオートファジーの存在を証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上の実験を進めるのに必要な薬品やプラスティック器具を購入するとともに、結果発表のために出席する学会への旅費(学生旅費を含む)として使用する。
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