研究課題/領域番号 |
23570226
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
ZHU YAN 大阪大学, 生命機能研究科, 特任助教 (50464235)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射状グリア / 神経前駆細胞 / マイクロ流体培養装置 |
研究概要 |
放射状グリアの形態が神経上皮の成長時にどのように前駆細胞としての性質を制御するかを調べるために、本研究では細胞体と放射状突起を異なるコンパートメントで観察することができるマイクロ流体培養装置のデザインを提案した。特に髄膜に由来する化学物質と細胞内器官の役割に注目して研究を進めた。初年度では、まずマイクロ流体培養装置設計した。その幾何学的パラメータは、流体の物理学的性質とin vitro予備実験に基づいて決定した。この装置の初期モデルはマイクロ流体装置を専門とする会社に製造を委託し、マウス胚の神経管から得られたマウス放射状グリア細胞で本製品をテストした。その結果、このマイクロ流体培養装置において神経幹細胞の生存と基質への接着が良く再現され、放射状グリアとしての極性も維持していた。 また2つのコンパートメント間の流体接続も適切であった。しかし、この初期のデバイスには二つの問題があることが判明した。一つは、細胞体チャンバーと神経突起チャンバーの間のギャップ(マイクログルーブ)を通過する放射状プロセスの割合が低すぎることであった。二番目は、2つのチャンバー間の化学物質の分離の問題がある。現在、私は両方のデバイスの設計と同様に、これらの問題を克服するための細胞培養方法の改良の方法を模索中である。このようpolydimethylsiloxane(PDMS)ベースのコンパートメントチャンバーのテストやデザインを行った結果は、基本的に放射状グリア細胞を特定の培養環境で調査することが可能であることを示している。設計パラメータによって、おおよそ放射状のプロセスを研究するのに適していることが判明した。現時点で、将来設計を改良するためのテンプレートを確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究は当初の計画の約60%の達成率に留まった。理由はチャンバーの化学物質の分離に関して明らかになった二つの問題によるものである。この問題のために、放射状グリア神経前駆細胞の特性を研究するためのデバイスのテストが困難になった。一方、これらの問題は研究目的で提起した問題に対処するための実験の代替アプローチの開発について考えるきっかけを与えてくれた。神経上皮の髄膜表面に由来する因子が、放射状グリアプロセスを通る逆行性シグナルを介して放射状グリア細胞の前駆細胞の特性に影響を与えることができるかどうかを検討するために、私は細胞移植を検討している。このモデルシステムでは、分散培養した髄膜細胞は、必要とするタンパク質を発現するコンストラクトでトランスフェクションすることができる。そしてトランスフェクトされた髄膜細胞は、その後の胚に移植することができ、最終的には髄膜に組み込まれる。このようにして人為的に発現させた因子の放射状グリア細胞にたいする効果を検討することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずコンパートメントで分離されたマイクロ流体デバイスの問題の克服を試みる。 2つの区画をリンクするマイクログルーブの断面や長さを、流体分離能を改善するために変更する。または、Xona Microfluidics社の販売する150ミリメートルの長さのコンパートメント培養装置を用いてテストする。一方、異なる脳領域から得た放射状グリア、または継代ニューロスフェアーから得た培養放射状グリアを用いて実験を行う。この対策により細胞体チャンバーから神経突起チャンバーに伸びる放射状のプロセスの割合を増加させることを期待している。また、マイクロ流体デバイスを用いた独立したアプローチをも検討する。一つは、髄膜細胞を胚の脳に移植で戻すことであり、これにより外部からの因子により、放射状グリア細胞の前駆細胞の特性に影響を与えることができるかどうかを検討したい。第二の方法は、弾力性のある培養基質上で放射状グリア細胞を培養することで接着による力が放射状グリアのプロセスの伸長にとって重要かどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
コンパートメントマイクロ流体デバイスの改良版を作製し、化学物質の分離能をテストする。市販の装置を用いた検討も行う。改良したコンパートメントシステムが実験のための基準を満たしていれば、プロセスチャンバーに様々な因子を加えてその放射状グリア細胞の前駆細胞としての特性や形態への影響の検討をおこなう。髄膜細胞移植システムについては、元来の問いに対処するためのマイクロ流体ベースのアプローチに代わるものとして検討を進める。また、放射状グリア細胞は物理的な張力が放射状グリア細胞のラジアルプロセスの形態や前駆細胞としての特性の維持に何らかの役割を果たしているかどうか検討するために調整可能な弾力性を有する基板上で培養することができる培養系を確立する。
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