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2012 年度 実施状況報告書

放射状グリアの形態と機能の関係

研究課題

研究課題/領域番号 23570226
研究機関大阪大学

研究代表者

ZHU YAN  大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (50464235)

キーワード放射状細胞 / マイクロ流体培養装置 / ケモカインSDF-1 / 子宮内細胞移植法
研究概要

本研究の目的は、放射状グリアの放射状細胞形態が神経上皮が厚みを増していく神経発生過程でどのように維持されるのかを理解することである。この疑問の解明は、放射状グリアの形態が分化した神経細胞の移動とその最終局在に関与する可能性、また放射状グリア自身の神経幹細胞としての性質に関与する可能性を追究する意味において意義深いものである。
昨年度はまず改良したマイクロ流体培養装置のテストを行った。主な改良点としては、2つのチャンバー間を結ぶマイクロチャネルの直径を小さくし、チャンバー間の化学物質の分離の改善を試みた点である。しかしながらこの改良は分離能を部分的に向上させるに留まり、一方でプロセスチャンバーへと伸長する放射状グリアの突起の数がさらに減少するという新たな問題が発生した。そこで昨年度の後半はこれらの問題を克服するための新規手法を模索することとなった。
ケモカインSDF-1とそのレセプターCXCR4のKOマウスにおいては、放射状グリアの基底膜側エンドフィートの形成が損なわれることを現在までに私は見出してきた。これは髄膜より分泌されるSDF-1が、放射状グリアの基底膜側エンドフィートに発現するインテグリンの細胞内インサイドアウトシグナリングによる基底膜への接着を介して、放射状グリアの形態が維持されるのではないかと考えた。そこで、SDF-1が放射状グリアの接着を亢進するかどうかを明らかにするために、神経上皮、ニューロスフィアの分散培養を用いた細胞接着アッセイ系を確立した。さらに、SDF-1によるインテグリンbeta1の活性化を免疫染色を用いて解析した。現在までの予備実験からは私の仮説を裏付ける結果が得られている。
それに加えて、発生期の神経管の表面に目的遺伝子を発現させ、その放射状グリアへの影響を解析することを目的とした子宮内細胞移植法の確立についても引き続き進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに三年間に行われる目標のうちの60%が達成されたと自己評価する。昨年度はマイクロ流体装置を用いた成果があまり得られなかったとはいえ、ケモカインとそのレセプターとの相互作用による放射状グリアの維持を明らかにしてきた。さらに複数の予備実験の結果より、ケモカインの作用は放射状グリアに発現するインテグリンのシグナル伝達を介することも示唆された。またマイクロ流体装置に代わる解析手段として髄膜細胞の移植法を開発したが、これは放射状グリアの基底膜側プロセスからのシグナルが放射状グリアの幹細胞としての性質に影響を及ぼすかどうかを解明するのに大いに役立つと思われる。マイクロ流体装置を用いた系に比べて、移植による方法は放射状グリアに作用する多くの候補分子を短期間にスクリーニングするのには適さないが、候補分子の機能を生体内で直接評価できるという意味では非常に有効な手段である。したがって、昨年度に確立した解析系は、髄膜による神経管発生の制御の分子メカニズムをin vivoレベルで解明する際の有効な基盤となるものである。

今後の研究の推進方策

次年度はSDF-1による放射状グリアの形態制御の解析を終了することを目標にしている。すなわち、SDF-1/CXCR4シグナルとインテグリンシグナル伝達系の相互作用について昨年度までに得られた証拠をさらに強固にする実験結果を得る予定である。具体的には確立された接着アッセイの系にインテグリンの中和抗体や特異的阻害剤を添加することを検討している。またSDF-1によるインテグリンシグナル伝達系の活性化を評価する手段としては、インテグリンやその下流エフェクターのウェスタンブロットによる解析を計画している。それらのデータをもとに論文執筆を準備する予定である。
また髄膜細胞の移植系を用いて髄膜より分泌されることが知られているいくつかの候補分子の影響について評価することを計画している。具体的にはTGFbeta1, BMP7, Wnt5aによる放射状グリアの前駆細胞能への影響を解析する予定である。

次年度の研究費の使用計画

次年度は抗体の購入、初代培養、ニューロスフェアー培養のための試薬購入、インテグリンまたは細胞内シグナル伝達分子をターゲットとした阻害剤などの購入、ウェスタンブロットの試薬購入を計画している。
その他の予算は、トランスジェニックマウスの維持、また種々の実験、マウス子宮内移植法、子宮内遺伝子導入法のための野生型マウスの購入に充てる予定である。髄膜由来の候補分子を発現させるための分子生物学的試薬の購入も予定している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] Four-Dimensional Analysis of Nucleogenesis of the Pontine Nucleus in the hindbrain2013

    • 著者名/発表者名
      Shinohara M, Zhu Y & Murakami F
    • 雑誌名

      Journal of Comparative Neurology

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chemokine CXCL12 and its receptors in the developing central nervous system: emerging themes and future perspectives2012

    • 著者名/発表者名
      Zhu Y & Murakami F
    • 雑誌名

      Developmental Neurobiology

      巻: 72 ページ: 1349-1362

    • DOI

      10.1002/dneu.22041

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dynamics of the leading process, nucleus and Golgi apparatus of migrating cortical interneurons in living mouse embryos2012

    • 著者名/発表者名
      Yanagida M, Miyoshi R, Toyokuni R, Zhu Y & Murakami F
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)

      巻: 109 ページ: 16737-16742

    • DOI

      10.1073/pnas.1209166109

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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