研究課題
増殖因子シグナルと接着シグナルの統合制御機構を明らかにするため、Epidermal growth factor receptor(EGFR)とインテグリンの共通のシグナル伝達分子であるFAKの役割をこれまで解析してきた。昨年度の解析により、ある特定のFAKのチロシン残基(YX)のリン酸化が、FAKの接着斑への集積を抑制することにより、FAKの自己リン酸化ならびにキナーゼ活性の低下を引き起こすことを、リン酸化疑似変異体(YXD)を用いた解析により見出した。YXのリン酸化によるFAKの機能制御機構を更に明らかにするため、野生型、非リン酸化型変異体(YXF)、YXDのいずれかに特異的に結合する分子を精製し、質量分析による同定を試みた。単純なアフィニティー精製では結合タンパク質は検出されなかったが、架橋試薬DSPを用いることにより、YXDに対して選択的に2種類のシャペロン(シャペロンA、B)が結合することを見出した。GFP融合FAKとmCherry融合シャペロンを用いて両者の局在を調べたところ、野生型とYXFは殆ど共局在しないのに対し、YXDはシャペロンと共局在することが分かった。シャペロンAは微小菅を構成するチューブリンと結合することが報告されていることから、GFP融合FAKとmCherry融合チューブリンを用いて同様に局在を解析したところ、YXDはチューブリンとも共局在することが分かった。興味深いことに、EGFRのリガンドであるHB-EGFに依存した内在性FAK発現細胞の増殖は、YXD変異体を発現することにより抑制されたことから、YXのリン酸化は細胞増殖に対してドミナント・ネガティブ作用をもつことも明らかになった。以上のことから、FAKはYXがリン酸化されることにより、シャペロンA、Bを介して微小菅へ間接的に結合し、その機能が負に制御されることが示唆された。
3: やや遅れている
前年度の計画目標に掲げていた、リン酸化に依存した新規FAK結合タンパク質を同定し、結合タンパク質を介して主要な細胞骨格の1つである微小菅と間接的に結合することによりFAKの機能を負に制御することを示唆するデータを得ることが出来た。しかしながら、平成24年度以降の研究計画に掲げた内容に関して遂行されていない部分もあるため、当初の予定よりも達成度はやや低いものと思われる。
平成24年度以降の研究計画に掲げた内容で遂行されていないものに関して、当初の計画通り遂行する。
平成23年度に計画していた抗体の作製、平成24年度以降に計画していたsiRNAやshRNAによるノックダウン実験、ヌードマウスを用いた腫瘍形成実験など、比較的予算がかかる実験が遂行されていないため、当初の予定した研究費にて計画を実施する。
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