研究課題/領域番号 |
23570227
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水島 寛人 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (30379094)
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キーワード | 細胞増殖 / 増殖因子 / 細胞接着 / 細胞骨格 |
研究概要 |
これまでに、focal adhesion kinase (FAK) のアミノ末端領域のFERMドメインに存在するあるチロシン残基を、疑似リン酸化させた変異体(YD)が、シャペロン分子を介して微小管を構成するチューブリンと間接的に結合すること、またそれによりFAKの接着斑への局在と活性化が抑制されることを見出してきた。 シャペロンの結合特異性をより詳細に調べるため、FERMドメインと残りのドメインへの結合性を調べたところ、リン酸疑似変異型FERMドメインに対して選択的に結合することが明らかになった。また、弱いながらも野生型FERMドメインにも結合することが分かった。これまで、GFP融合FAKとmCherry融合シャペロンを用いた局在解析により、YD変異体がシャペロンと共局在することが明らかになっていたが、細胞を微小管の重合阻害剤であるノコダゾールやコルヒチンで処理する事により、野生型FAKもシャペロンやチューブリンと共局在することが分かった。 次に、FAKの機能を抑制するFERMドメインのリン酸化・脱リン酸化の過程を詳細に解析するため、FAKのリン酸化を特的に認識する抗体の作製を行った。ウサギならびにモルモットを用いて抗体の作製を行ったところ、非リン酸化変異体(YF)に交差反応するものであった。そこで、医薬基盤研究所バイオ創薬プロジェクトの協力により、抗体の可変部位のみを発現可能なsingle chain Fv(scFv)のライブラリーを用いて、リン酸化ペプチドを特異的に認識するscFvのスクリーニングを行った。その結果、非リン酸化ペプチドには反応しない、14クローンを得ることが出来た。 以上のことから、FAKのFERMドメインとチューブリンの結合が、FERMドメインのリン酸化のみではなく、微小管の重合状態にても制御されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ウサギおよびモルモットを用いて、リン酸化FAK特異的抗体の作製を試みたが、他の分子のリン酸化やFAKの他のリン酸化を認識する特異性の低いものしか得られなかった。そのため、scFvライブラリーをスクリーニングすることにより、リン酸化FAKを認識する複数のscFvクローンを得ることが出来た。しかしながら、これらscFvを用いた解析も含め、遂行されていない研究計画があるため、当初の予定よりも達成度はやや低いものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度移行の研究計画に掲げた内容で、遂行されていないものに関して、当初の計画通り遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物を用いた抗リン酸化FAK抗体の作製が計画通り達成されなかったため、scFvライブラリーをスクリーニングすることにより、抗体を得るという方針の変更をとった。そのため、抗体を用いた実験と、その後に行う予定であった実験が行えなかったため。 研究計画の達成速度は遅れているものの、概ね計画通りの内容は遂行されている。そのため、当初の予定した研究費にて計画を継続する。
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