研究課題/領域番号 |
23570229
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小田 裕香子 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70452498)
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キーワード | 上皮細胞 / トリセルラージャンクション / 細胞骨格 / 細胞形態形成 |
研究概要 |
本研究は、上皮細胞が敷石状形態を維持するための、“頂点 (=tricellular junction; TCJ)”の機能と分子機構を明らかにするとともに、組織構築における上皮細胞の“TCJ”が果たす役割の生体レベルでの解明を目的として行われた。 申請者は昨年度までに、トリセルリンが上皮細胞の形態形成に関わることを見出し、トリセルリンの下流でアクチン制御に関わる因子を同定していた。本年度は、そのアクチン制御に関わる因子(低分子量GTPase活性化因子)とトリセルリンの細胞形態形成における役割と関係を詳細に解析した。低分子量GTPase活性化因子の特異的抗体を作成し、細胞間接着形成時における細胞内局在を明らかにし、特定のタイミングではトリセルリンと局在が一致することを見出した。また、トリセルリンとの結合ドメインを同定し、細胞内及びin vitroでの結合を確認した。さらに、定常状態では自己抑制化している低分子量GTPase活性化因子がトリセルリンにより活性化し、アクチンを制御することを見出した。本研究内容を論文に纏め、現在投稿中である。 本研究により、上皮細胞研究においてこれまでほとんど明らかにされてこなかった「多角形の細胞の頂点」の役割と機能が明らかになり、今後の細胞生物学研究に新しい視点をもたらすのみならず、免疫系やがん、発生など上皮細胞のダイナミクスが密接に関与する様々な生命現象とその破綻機構を分子レベルで理解につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画として、①前年度までに作製したTCJにおけるアクチン骨格制御に関わる因子群の過剰発現細胞株およびノックダウン細胞株を組み合わせて用い、それぞれの分子の細胞内局在および発現の解析を行うこと、②トリセルリンのアクチン制御に関わる低分子量Gタンパク質の活性化に及ぼす影響を、分子生物学的手法ならびに細胞生物学的手法を用いて明らかにすることを挙げており、これらはおおむね達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、トリセルリンおよび低分子GTPase活性化因子のin vivoでの役割を明らかにすることを目指す。モデル生物としてゼブラフィッシュを用い、モルフォリノによる発現抑制を行い発生時の形態変化における両者の役割の解明を目指す。また、トリセルリンによる低分子GTPase活性化因子の活性化制御メカニズムをin vitroで解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、モデル生物としてゼブラフィッシュを用いたin vivoでの実験系や、精製タンパク質を用いたin vitroでの実験系を計画している。目標達成には、ゼブラフィッシュ、試薬、プラスチック器具、様々な消耗品が不可欠となる。また、得られたデータの解析を行うためのパソコン、研究成果を発表するための国内外への学会旅費、セミナー等への参加費用や論文別刷り費用として使用する予定である。
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