研究課題
本研究では、研究代表者らが独自に開発したリン酸化プロテオーム解析法によって新たに同定したERK/MAPキナーゼの標的基質群について、リン酸化による生理・病理機能の制御メカニズムを包括的・体系的に明らかにすることを目標としている。本年度は、1)アクチン架橋タンパク質の一つであり、がんの悪性化に伴って発現が低下するEPLIN (epithelial protein lost in neoplasm)、2)細胞間接着部位に局在し、がん細胞の浸潤を制御するPHドメインタンパク質であるFam129b/Minerva、3)細胞質ダイニンの中間鎖Dync1i2、の3つのERK基質について以下の知見を得た。まずEPLINが腎臓糸球体内のメサンギウム細胞に高発現しており、ヒト初代培養メサンギウム細胞において接着斑に局在するpaxillinと細胞辺縁部で相互作用することをin situ PLA (proximity ligation assay)法によって明らかにした。そしてこのEPLINとpaxillinの相互作用はMEK/ERK経路の活性化によって抑制されることを示した。またFam129b/Minervaと細胞質ダイニンの中間鎖Dync1i2をGSTまたはHaloタグとの融合タンパク質として調製後、ビーズに固相化し、全細胞抽出液とインキュベートして結合因子群を検索した。そしてERKによるFam129bやDync1i2のリン酸化によって親和性が変化する結合因子に注目して質量分析法による同定を行った。
3: やや遅れている
ERK基質であるFam129bとDyncli2にHaloタグを付加し、細胞間接着装置の発達したマウス上皮細胞に発現させて生細胞イメージングと結合タンパク質の探索を行う予定であった。しかしながらAmerican Type Culture Collection よりBiosafety level 2に該当するmIMCD-3細胞を入手するための手続きに想定以上の時間を必要としたため、研究に遅延が生じた。
最近mIMCD-3細胞を入手することができたため、HaloタグまたはGFPタグを付加したFam129bとDync1i2(野生型およびリン酸化部位の変異体)を発現させ、生細胞イメージングによってERK経路依存的な細胞運動や細胞間接着への影響を検討する。また同定されたFam129bとDync1i2との結合因子について確認実験を行った後、これらの結合の機能的意義を変異体の過剰発現やRNAiノックダウンなどによって検討する。
ERK基質であるFam129bとDyncli2にHaloタグを付加し、細胞間接着装置の発達したマウス上皮細胞に発現させて生細胞イメージングと結合タンパク質の探索を行う予定であった。しかしながらAmerican Type Culture Collection よりBiosafety level 2に該当するmIMCD-3細胞を入手するための手続きに想定以上の時間を必要としたため、未使用額が生じた。最近mIMCD-3細胞を入手できたため、Haloタグを付加したFam129bとDyncli2(野生型及びリン酸化部位の変異体)の生細胞イメージングによって細胞運動や細胞間接着への影響を検討する予定である。またHaloタグリガンド固相化レジンを用いてFam129bやDyncli2との結合タンパク質をプルダウンし、質量分析法による大規模解析も試みることとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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