研究課題/領域番号 |
23570232
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岡 敏彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40263321)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ミトコンドリア |
研究概要 |
私達は、KLP6がHeLa細胞だけでなく神経芽細胞neuro 2aにおいても、ミトコンドリアの形態形成と細胞内運搬に機能することを明らかにしてきた。平成23年度はこの成果をまとめ論文として報告した(Tanaka et al., 2011)。 そして、KLP6の機能をさらに調べるため、KLP6のKBPとの結合を検討した。KLP6を幾つかのドメイン(モーター、FHA、テール)に分け、HeLa細胞でKBPと共発現後に免疫沈降により、相互作用を検討した。カルボキシ末端(テールドメイン)を欠損した変異体は、KBPとの結合能を有していた。そこで、その変異体をアミノ末端のモータードメインと中央領域のFHAドメインに分け、免疫沈降により結合能を検討したところ、どちらも結合能を失っていた。このことから、KBPへのKLP6の結合には、モータードメインとFHAドメインの両方が必要であることが明らかとなった。このことは、ΚLP6がモータードメインとFHAドメインにおいてKBPとの結合が報告されているKIF1Bαと高い相同性を示すことと良く一致する。 LETM1のどの機能ドメイン(EF hand、Leucine zipper、LETM相同ドメイン)がクリステ構造形成に重要であるかを検討するために、ヒトLETM1の各ドメインの欠損変異体を酵母LETM1相同遺伝子(MDM38)の欠損株に導入し、呼吸に依存した生育を指標にて検討した。その結果、EF handドメインは酵母の生育に必要でなく、Leucine zipperまたはLETM相同ドメインを欠損すると生育が相補できないことが分かった。しかし、Leucine zipperを壊すような点変異を導入してもmdm38変異株の生育は相補されることから、Leucine zipperドメインの欠損が構造変化をもたらして、機能不全になることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、計画通りKLP6の論文をまとめ、KLP6がミトコンドリアの細胞内運搬に働く新しいキネシンであることを報告した。さらに、KLP6の相互作用分子であるKBPに対する結合領域を同定した。また、LETM1の機能ドメインを解析するため、酵母mdm38欠損変異株を用い、LETM相同ドメインが重要であることを明らかにした。これにより、当初の計画の半分以上は達成できた。残りの平成23年度分の研究計画は平成24年度で実施したい。
|
今後の研究の推進方策 |
私達の研究により、3つのキネシン(KLP6とKIF1BαとKIF5/KHC) がミトコンドリアの細胞内移動に働くことが示された(Nangaku et al., 1994; Tanaka et al., 1998; Tanaka et al., 2011)。しかし、この3つのキネシンがミトコンドリア運搬をどのように制御しているのかは、まだ明らかでない。そこで、3つのキネシン個々に対するshRNA (short hairpin RNA)を安定に発現する細胞株を構築することで、それぞれのキネシンの安定したノックダウン細胞を構築する。ミトコンドア運搬は細胞の生存に大きく影響を与えるため、shRNAの発現をドキゾサイクリンなどで調節できる系(TetOn, TetOffなど)を用いる予定である。また、KBPの過剰発現はKLP6のミトコンドリア膜結合を促進しないことから、受容体やそのアダプターではないと考えられた。そこで、KBPの結合領域とKLP6のATPase活性に与える影響を生化学的に検証する。さらに、遅れている線虫ダイニン遺伝子dlc-4とダイナクチン遺伝子dnc-4の機能解析も合わせて進めていきたい。LETM1に関しては、LETM相同ドメインの点変異を導入し、酵母の生育を指標にして機能欠損の点変異体を作成する。そして、その変異体がクリステ構造形成に重要であるかを検討するために、リコンビナントタンパク質を発現・精製し、リポソームでの膜陥入構造の形成能を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者はこれまで線虫・動物細胞を取り扱ってきており、本研究計画での線虫用インキュベーター、実体蛍光顕微鏡、動物細胞用のCO2インキュベーター、コンフォーカル顕微鏡などは現有の研究設備・施設を使用するため、平成23年度同様に、研究経費は主に消耗品費に充てる予定である。
|