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2011 年度 実施状況報告書

HIPK2を制御する新規Wnt経路分子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 23570235
研究機関九州大学

研究代表者

日笠 弘基  九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (40596839)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードWnt / HIPK2 / TCF3 / 国際情報交流 New York
研究概要

申請者は、Wnt経路の最終因子であり転写抑制因子として作用するTCF3の制御機構に注目し、TCF3の結合因子として核局在キナーゼHIPK2を同定した。さらに、Wnt8刺激に応答してHIPK2がTCF3をリン酸化することで標的DNAへの結合を弱め、結果として初期胚の背腹パターン形成に関わる標的遺伝子の転写促進に働くことを示した。そこで本研究費の獲得により、未だ不明であるHIPK2よりも上流のWntシグナル経路およびHIPK2活性化のメカニズムを解明するとともに、これまでわかっているWnt-β catenin-TCF1/LEF1経路との共通性や相違点を検討することにより、Wnt経路の全貌を解明して新展開を図っている。TCF3のリン酸化にどのWnt経路が関わるのかを調べるために、各種WntリガンドおよびWnt経路構成因子によるTCF3のリン酸化能を調べ、以下の結果を得た。(1)幾つかのWntは"β cateninの安定化"と"TCF3のリン酸化"を共に引き起こす。(2)Wntの共役受容体であり、"β cateninの安定化"に関わるLRP6が"TCF3のリン酸化"を誘導する。GSK3やAxinへの阻害能を欠くLRP6変異体(5m)では"TCF3のリン酸化"を起こさない。(3) 優性阻害型GSK3およびAxinはTCF3のリン酸化を引き起こし、野生型GSK3はTCF3のリン酸化を抑制する。(4) βcateninの過剰発現は"TCF3のリン酸化"を起こさない。 これらより、おそらくWnt刺激によるGSK3またはAxinの抑制の結果、"βcateninの安定化"と"TCF3のリン酸化"の2方向にシグナルが分岐することが示唆された。今後、GSK3またはAxinの抑制によるHIPK2の制御機構の解明が興味深い課題となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

HIPK2の上流のWntシグナル経路の解明を目指し、既知のWnt-β catenin-TCF1/LEF1経路構成因子のHIPK2/TCF3リン酸化経路への関与を検討したところ、"βcateninの安定化"に関わるWnt経路が"TCF3のリン酸化"をも制御していることがわかった。さらに、βcateninを過剰発現させても"TCF3のリン酸化"に変化を引き起こせないことから、Wnt刺激によるGSK3またはAxinの抑制の下流において、"βcateninの安定化"と"TCF3のリン酸化"の2方向にシグナルが分岐することが明らかになった。これらのデータをもとに、Wnt刺激によって"β catenin-TCF1/LEF1経路による転写活性化"と"TCF3による転写抑制の解除"の両方が起こり、Wnt標的遺伝子の発現の増大が引き起こされるという"スイッチモデル"を提唱し、J.Biol.Chem.に発表した。

今後の研究の推進方策

当該年度で、GSK3およびAxinの優性阻害変異体がTCF3のリン酸化を引き起こすことを見いだしたが、それがどのようなメカニズムでHIPK2の活性化に繋がるのかはいまだ全く不明である。そこで、GSK3やAxinの過剰発現および機能阻害により、HIPK2のキナーゼ活性、TCF3とHIPK2間の結合、HIPK2とTCF3の局在変化への影響を検討する。さらに、HIPK2にはGSK3によるリン酸化のコンセンサス部位が幾つか認められることから、GSK3とHIPK2の結合およびリン酸化の有無を調べる。そして、HIPK2のGSK3によるリン酸化が確かめられたら、さらにリン酸部位のリン酸化型および非リン酸化型変異体を作製し、TCF3へのリン酸化能を検討する。また、TCF3経路制御に関わる遺伝子を網羅的に検索するため、アフリカツメガエル原腸胚cDNAライブラリー由来のRNAプールをアフリカツメガエル初期胚に顕微注入して、TCF3のリン酸化および量的変化を指標としたライブラリースクリーニングを行う予定である(申請者の所属してたSokol研<New York, Mount Sinai School of Medicine>と共同研究)。

次年度の研究費の使用計画

GSK3,Axin,HIPK2の機能的相互作用の検討のためには機能阻害実験が必須であり、それらの特異的siRNA並びにアンチセンスモルフォリーノを購入する。また、蛋白質の結合やリン酸化の有無を調べるために免疫沈降やキナーゼアッセイを行う予定であり、それに必要な試薬、抗体、放射性同位体も購入する。そして、ライブラリースクリーニングのためのcDNAプールのプラスミド抽出キットおよび顕微注入用mRNA合成キット、さらにTCF3の変化を調べるための多検体用ウエスタンブロット装置と試薬を購入予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Phosphorylation of TCF proteins by homeodomain-interacting protein kinase 2.2011

    • 著者名/発表者名
      Hikasa H, and Sokol SY.
    • 雑誌名

      J.Biol Chem

      巻: 286 ページ: 12093-120100

    • 査読あり

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公開日: 2013-07-10  

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