研究課題/領域番号 |
23570236
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本庄 雅則 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90372747)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プラスマローゲン |
研究概要 |
既に分離しているプラスマローゲン欠損変異細胞に、精製プラスマローゲンから脂肪酸を遊離させた1-アルケニル-プラスマローゲンを添加したところ、プラスマローゲン量が野性型細胞と同程度まで回復されたことから、プラスマローゲンの脂肪酸の多様性形成に脂肪酸転移酵素の関与が示唆される結果を得た。また、コリンプラスマローゲンの合成は、エタノールアミンプラスマローゲンの極性基の交換によってなされると考えられているが、提唱されているような単純な経路とは異なる経路で合成される新たな知見を得た。また、プラスマローゲンの脂肪酸の多様性形成に関与すると予測される複数の候補タンパク質の発現をRNA干渉法によって抑制した。その結果、少なくとも2つの酵素が、プラスマローゲンの多様性形成に機能していることを見出した。 特定プラスマローゲン分子種合成障害性変異細胞における新規プラスマローゲン生合成を検討したところ、sn-1の長鎖アルコールの分子種によって合成速度が異なっていた。一方、プラスマローゲン欠損変異細胞に、特定の長鎖アルコール分子を有するアルキルグリセロールを添加すると、その分子種のみを有するプラスマローゲンが合成されていた。従って、プラスマローゲンのsn-1の長鎖アルコールの多様性は、長鎖アルコール合成の基質である脂肪酸-CoAの濃度依存的であることが示唆された。 プラスマローゲン生合成制御に異常を有する変異細胞を活性酸素に対する感受性の違いを利用して分離した。得られた変異細胞は、少なくとも特定の長鎖アルコール分子をsn-1に有するプラスマローゲンが増加していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたプラスマローゲンの多様性形成に機能するタンパク質が同定されつつある状況である。また、プラスマローゲンのsn-1位の長鎖アルコールおよびsn-2位の脂肪酸種の多様性が異なるシステムで制御されていること、さらにはコリンプラスマローゲンの生合成経路などに関する新たな知見を見出している点など、着実に実行できているものと考えている。 プラスマローゲン生合成制御に異常を有する変異細胞の分離に関しては、変異細胞の特性を明らかにすべく現在進行中であるが、当初の計画どおり、継続的に変異細胞の分離を試みる必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
RNA干渉法によって見出したプラスマローゲンの多様性に機能するタンパク質の発現、細胞内局在、機能特性を詳細に解析する。また、初年度で得たプラスマローゲンのsn-1位の多様性形成に関する仮説を検証するため、異なる脂肪酸存在下で培養した細胞におけるプラスマローゲン分子種を解析する。さらに、一連の研究で見出したプラスマローゲンの多様性が異なる細胞において、プラスマローゲン生合成の律速酵素であるfatty acyl-CoA reductase 1 (Far1)の安定性を検討し、特定のプラスマローゲン分子種が細胞内プラスマローゲン量の情報源として感知されているのか否かを明らかにする。 プラスマローゲン生合成制御に異常を有する変異細胞の分離に関しては、ジーントラップ法を用いた手法でも試み、変異細胞の分離と相補遺伝子の単離の効率化を目指す。また、すでに分離しているプラスマローゲン生合成制御に異常を有する変異細胞に関しては、変異細胞の特性解析、相補遺伝子の単離をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
RNA干渉法によって見出したプラスマローゲンの多様性に機能するタンパク質に対する抗体の作製、脂肪酸添加細胞におけるプラスマローゲン分子種の解析、異なるプラスマローゲン分子種を有する細胞におけるFar1の安定性の評価、分離した変異細胞の特性解析などの生化学的解析に50万円、変異細胞の相補遺伝子の単離、ジーントラップ法を用いた変異細胞の分離など分子生物研究および細胞培養に合わせて90万円を予定している。
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