研究課題/領域番号 |
23570236
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本庄 雅則 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90372747)
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キーワード | プラスマローゲン / ペルオキシソーム / エーテルリン脂質 / 膜タンパク質 |
研究概要 |
プラスマローゲン欠損性変異細胞に1-アルケニル-プラスマローゲンを添加したところ、プラスマローゲン量が野性型細胞と同程度まで回復され、プラスマローゲンの脂肪酸の多様性形成に脂肪酸転移酵素の関与が示唆された。また、Phospholipase A2 (PLA2)の阻害によりsn-2位に飽和脂肪酸を含むプラスマローゲンの生合成量が増加した。以上の結果からプラスマローゲンの脂肪酸の多様性もグリセロリン脂質の場合と同様に脂肪酸のリモデリングすなわちランズ回路 (Lands cycle)で達成されると推察された。 細胞内プラスマローゲン量を認識する機構を明らかにするため、プラスマローゲン欠損変異細胞にモノ不飽和脂肪酸あるいは多価不飽和脂肪酸を有するプラスマローゲンを導入し、細胞内プラスマローゲン量依存的に分解されるペルオキシソーム膜タンパク質Fatty acyl-CoA reductase 1(Far1)の発現量を検討した。その結果、添加したプラスマローゲンの分子種によってFar1の分解への影響が異なったことから、特定の脂肪酸を有するプラスマローゲンの量を認識する機構の存在が示唆された。 プラスマローゲンの生合成を制御するFar1はペルオキシソームのC末アンカータンパク質であること、プラスマローゲン依存的な分解にはFar1のマトリクスに配向する領域が必要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラスマローゲン依存的なFar1の安定性制御に必要な領域を同定するとともに、特定のプラスマローゲン分子種が細胞内プラスマローゲン量の情報源として感知されている可能性を強く示唆する結果を得るなど、プラスマローゲン生合成制御機構の解明に関して進展した。またプラスマローゲンの多様性がランズ回路によって形成されるものと考えられる結果も得ており、細胞内プラスマローゲン量として認識されるプラスマローゲン分子種の生合成経路を明らかにしつつある状況である。特定プラスマローゲン分子種合成障害性変異細胞において活性が低下するプラスマローゲン合成ステップも見出しており、プラスマローゲンの多様性形成に関しても着実に展開しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内プラスマローゲン量として感知される分子種をほぼ明らかにできたため、さらにどの細胞小器官におけるプラスマローゲン分子が認識されているのかタンパク質輸送阻害剤などを用いて明らかにし、プラスマローゲンを感知する機構を解明する。また、ジーントラップ法を用いてプラスマローゲン生合成制御に異常を有する変異細胞の分離と相補遺伝子の単離の効率化を目指すとともに、特定プラスマローゲン分子種合成障害性変異細胞の障害原因を明らかにする。さらに、プラスマローゲンの蓄積が特定の脂質の生合成を抑制することも見出したことから、その障害様式を解明することでプラスマローゲンの生合成制御の生理的意義を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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