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2011 年度 実施状況報告書

細胞外マトリックスからのシグナルによる粘液ムチンの産生制御の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23570238
研究機関秋田県立大学

研究代表者

岩下 淳  秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70315597)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード粘液ムチン / 細胞外基質
研究概要

気道の表面では粘液ムチンが産生されて粘膜を形成し、機械的な生体防御を行う。粘液ムチンの産生が多すぎる場合には喘息の症状が悪化するため、ムチン産生の機構を明らかにし、制御することが可能となれば、喘息や感染症などの症状緩和につながる。 我々は細胞外マトリックスの成分であるコラーゲンからのシグナルが、粘液の主成分であるMUC5ACムチンの産生を抑制する事実を見出し、報告した。また、同じく細胞外マトリックスの成分であるラミニンは逆にMUC5ACムチンの産生を増加させた。これらの結果は細胞外マトリックスからのシグナルにより粘液ムチンの産生が制御される機構の存在を初めて示した。本研究では細胞外マトリックスがムチン産生を制御するシグナル経路の詳細を明らかにし、ムチンの産生を特異的に制御する可能性を探ることを目的としている。 本年度の研究実施計画に従い、細胞外マトリックスからのシグナルが粘液ムチンMUC5ACの産生を制御する機構について、インテグリンを介した経路を中心に解析を行った。まずMUC5ACムチン産生制御に関与するインテグリンサブタイプを明らかにする実験をインテグリン阻害抗体を用いて行った。その結果インテグリンのサブタイプの中でもインテグリンβ3とβ4が、ラミニンからのシグナルによってムチン産生が増加する経路に、強く関わるという結果が得られた。それに対し、β5などのサブタイプでは関与が見られなかった。また、インテグリン経路の下流に存在するAktキナーゼが、ムチンの産生を抑制するという結果も得られた。さらにAktキナーゼは転写因子NfκBを介してムチンの産生を抑制するなどの興味深い知見が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の研究計画では、ムチンの産生に関与するインテグリンのサブタイプを同定するのみの予定であった。研究の結果、23年度にはβ3などのサブタイプがムチン産生に関与することを明らかにし、研究予定は達成した。さらにインテグリン経路の下流にあるAktキナーゼが予想に反し、ムチン産生を抑制することを明らかにした。インテグリン経路の下流についても解析が進んだことから、当初の計画以上に研究が進展している。さらにムチン産生に関わる経路の下流について解析を続けている。

今後の研究の推進方策

科学研究費の有効利用のため経費削減に努め、次年度以降に多くの大学院生が本研究に加わることが確定したため、次年度使用額が発生した。今後は細胞外基質からのシグナルを粘液ムチンの産生につなげているインテグリンのサブタイプをさらに明らかにする予定である。細胞外基質と細胞表面を結ぶインテグリンレセプターはαサブユニットとβサブユニットの2つによって構成されている。インテグリンのαサブユニットにはβ同様に多くのサブタイプが存在し、インテグリンレセプターの基質特異性を決定している。細胞中のα4、α5、αV、β1、β3、β4、β5サブタイプのα、βサブユニットの機能を阻害抗体に加え、siRNAなどを用いて特異的に阻害する。これらの抗体などによってコラーゲンによるMUC5ACムチンの減少やラミニンによるMUC5ACムチンの増加が阻害されれば、そのインテグリンサブタイプを介してシグナルが細胞内に伝わり、ムチン産生を制御していることが示唆される。 さらにインテグリンの活性を阻害する実験と平行して、逆に人為的にインテグリンの活性を増加させる実験を行い、阻害した場合と逆の結果が得られることを確認する。pCMV発現ベクターを用いてインテグリンタンパク質を細胞内で強制発現させる。α4、α5、αV、β1、β3などのインテグリンの発現が増加した場合のMUC5ACの産生への影響をさらに観察する。またAktとムチン産生をつなぐ経路の詳細を明らかにしていく。 以上の実験により細胞外基質がインテグリンを介したシグナル経路でムチンの産生を制御する機構を明らかにし、特異的に粘液ムチンの産生を制御する方法を探る。

次年度の研究費の使用計画

本研究の実施には分子生物学的な解析を行うための試薬、プラスチックチューブなどを中心とした消耗品が多数必要である。特にインテグリンや活性化したAktキナーゼを検出するために、ウェスタンブロットの感度を上げる試薬などを中心に購入していく予定である。またインテグリンなどに対する抗体やsiRNAなどの試薬が、多種類必要である。インテグリンの各サブユニットに対する阻害抗体とsiRNAを次年度の研究費で購入する予定である。またAktやその下流に位置するシグナル分子に対する阻害剤を購入し、ムチン産生につながるシグナル経路の詳細を明らかにすることで、喘息の症状緩和につなげる阻害剤などの探索を大学院生らと共に行っていく予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] The histone deacetylase inhibitor trichostatin A induces cell cycle arrest and rapid upregulation of gadd45b in LS174T human colon cancer cells2012

    • 著者名/発表者名
      Tomoyuki Taniguchi, Jun Iwashita, Jun Murata, Kenji Ueda and Tatsuya Abe
    • 雑誌名

      Advances in Biological Chemistry

      巻: 2 ページ: 43-50

    • DOI

      10.4236/abc.2012.21005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Differentiation- and apoptosis-inducing activities of rice bran 5 extracts in a human colon cancer cell line.2011

    • 著者名/発表者名
      Akiko Takashima, Masanobu Ohtomo, Tsugio Kikuchi, Jun Iwashita ,Tatsuya Abe, Keishi Hata
    • 雑誌名

      J Food Sci Technol

      巻: 1 ページ: 1-5

    • DOI

      10.1007/s13197-011-0368-2

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒト肺癌細胞株NCI-H292におけるAktキナーゼを介したMUC5ACムチンの産生制御2011

    • 著者名/発表者名
      宮田阿依、岩下淳
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011年12月15日

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公開日: 2013-07-10   更新日: 2013-09-11  

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