研究課題
気道上皮細胞から産生される粘液ムチンは、気道表面に粘液層を形成し、生体防御において重要な役割を果たす。しかし喘息患者の気道では粘液の主成分であるMUC5ACムチンが過剰に産生され、呼吸を困難にする。これまでに我々は、ヒト気道上皮細胞株NCI-H292において、細胞外基質の主要成分である4型コラーゲンからのシグナルが、MUC5ACムチンの産生を抑制する現象を見出した。同じく細胞外基質の成分であるラミニンは逆に、MUC5ACムチンの産生を促進する。本研究では細胞外基質からのシグナルによるムチン産生制御機構を明らかにすることを目的とした。細胞外基質からのシグナルは接着分子インテグリンを介して、細胞内に伝わる。インテグリンはαとβの2つのサブユニットから成るヘテロダイマーであり、多数のサブタイプが存在する。各サブタイプを抗体やsiRNA等を用いて特異的に阻害した結果、インテグリンβ1の阻害がMUC5ACムチンの産生を促進した。逆にαサブユニットの阻害はMUC5ACムチンの産生を抑制した。インテグリンからの刺激はAktなどを介して細胞内に伝わる。Aktの阻害によってMUC5ACムチン産生は増加した。また細胞と細胞外基質との接着が減衰するとMUC5ACムチンの産生が著しく増加した。本研究の結果、ヒト気道上皮細胞において細胞外基質からのシグナルはインテグリンβ1/Akt経路の活性化によってMUC5ACムチン産生を抑制し、インテグリンαサブユニットはMUC5ACムチン産生を増加させる活性を持つことが示唆された。今後は細胞外基質/インテグリン/Akt経路によるMUC5ACムチン産生制御をさらに解析し、喘息症状緩和法開発への展開を図る。
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