研究課題
小胞体、ゴルジ体、細胞膜に局在するタンパク質や分泌タンパク質は、合成後小胞体に組み込まれ、小胞輸送によって細胞内を移動する。輸送のスタート地点である小胞体において、タンパク質はCOPII小胞に取り込まれて搬出される。近年COPII小胞輸送システムの破綻が様々な病気の原因となることが示され、高等動物における詳細の解明が待たれている。本研究では、2種の動物固有のCOPIIコート結合タンパク質(p125・Sec1B)に関して解析を行い、両者の輸送における役割を明らかとすることを目的とする。平成23年度は以下の結果を得た。1. p125の解析 p125ノックアウトマウスの細胞抽出液を用いて、p125がCOPIIコートタンパク質間の相互作用やCOPIIコートタンパク質とSec16A(酵母を含む様々な真核生物に存在するSec16ホモログ)との相互作用に与える影響を解析した。その結果、p125の欠損はCOPIIコートの内層を形成するSec23タンパク質と外層を形成するSec31タンパク質の結合を著しく弱めること、一方Sec23とSec16Aの結合には影響しないことが明らかとなった。2. Sec16Bの解析 これまでの解析より、Sec16Bは小胞体からペルオキシソームへの膜タンパク質輸送に関与することが示唆されていた。本年度はSec16Bの構造-機能相関を解析した。Sec16Bを発現抑制した細胞に変異Sec16Bタンパク質を発現させ、その効果を調べた結果、Sec16Aには存在しないSec16BのC末端側領域がペルオキシソームへの輸送には重要であることがわかった。HeLa細胞にFLAGタグを付加したSec16Bを高発現させ、免疫沈降後、共沈降してくるタンパク質を解析した。Sec16A/B、Sec13に加えて、数種類のミトコンドリアタンパク質とRafキナーゼが同定された。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度予定の実験計画のうち、多くの部分を完了することができた。 p125に関しては、COPIIコートタンパク質間の相互作用をp125が調節するという仮説を、p125欠損細胞を用いて示すことができた。また、Sec16Bの解析に関しては、構造-機能相関を明らかとし、さらに新たな結合タンパク質の候補を得ることができた。今後この結合タンパク質を手がかりとして、Sec16Bの機能解析を新たな方向に展開することが可能と考える。
当初の年次計画に沿って計画を推進する。 平成23年度の計画の中で、p125ノックアウトマウス精細胞の解析およびp125ノックアウトマウスの胎児繊維芽細胞を用いた解析が充分に進行できなかった。これは、作製した胎児繊維芽細胞の質に問題があったと考える。従って、今後は細胞株の樹立法を変更して解析を行う。またさらに、p125ノックアウトマウス個体の解析を多方面から進める。 Sec16Bに関しては、小胞体からペルオキシソームへのタンパク質輸送における役割の解明を焦点として、解析を進める。また、平成23年度に同定された結合タンパク質との関わりに関しても解析を進める。
平成23年度と同様に、大部分を物品費に使用する。学会参加のための旅費に一部を使用する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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