研究課題
核-細胞質間の選択的分子輸送の大部分はImportin βファミリー運搬体分子によって担われる。しかし、その輸送活性は細胞ストレス時には顕著に低下することが判った。一方、代表的な分子シャペロンであるHSP70は、熱などの細胞ストレスに応答し、速やかに細胞質から核に移行するが、その核内移行メカニズムは不明であった。本研究では、熱ストレス応答時にHSP70を核内に輸送する新規運搬体分子を細胞抽出液から生化学的に同定することに成功し、その分子をHikeshiと命名した。HikeshiをsiRNAで処理した細胞では、熱ストレス後に正常温度に戻しても、ストレス状態から回復できずに死滅する細胞が顕著に増加した。これらの結果は、熱ストレス時には、通常時のImportin βファミリー分子とは全く異なるHikeshiによる輸送が駆動し、HSP70の核内での機能が細胞生存に重要であることを示すものである(Cell, 2012)。さらに、熱ストレス応答による核-細胞質間分子輸送の変換機構の解析や線虫個体などでのHikeshi機能解析を進めた。最終年度は、主に蛍光相関法/蛍光相互相関法(FCS/FCCS)によるHikeshi とHSP70の分子間相互作用解析を行った。細胞抽出液やリコンビナントタンパク質を用いてのin vitro解析から、HikeshiとHSP70の分子間相互作用が温度依存的であることを示唆する興味深い結果が得られた。また、Hikeshi分裂酵母ホモログ(spHikeshi)の解析から、spHikeshiは分裂酵母Hsp70(Ssa2)と結合し、HeLa細胞でのin vitro輸送系においてSsa2を核内に輸送することを明らかにした。分裂酵母では、熱ストレス時のspHikeshi要求性は見られなかったが、グルコース枯渇時の要求性が確認された(FEBS lett., 2014)。
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FEBS Lett.
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10.1016/j.febslet.2014.04.018.
J. Biol. Chem.
巻: 288 (34) ページ: 24540-24549
10.1074/jbc.M113.489286.