研究課題
複製フォーク複合体因子やその他の複製制御因子について、未分化細胞にて機能解析を行った。1) AND-1, Tipin:胎生幹細胞(ES細胞)では複製フォーク因子AND-1とTipinが高発現しており、分化誘導に伴い顕著に減少することを見出した。一方、複製開始に必要なMcmやGINSの発現量は分化の過程で顕著な変動がなかった。AND-1の結合部位をクロマチン免疫沈降DNA解析にて調べたところ、ES細胞特異的な転写因子Pou5f1, Nanog, Sall1, Sall4のプロモーター領域に蓄積していることを見出した。一方、分化を制御する転写因子など発現の低い遺伝子のプロモーター部位には弱い結合が見られるか、または遺伝子全体にわたり結合していた。増殖の早いES細胞はほとんどがS期(DNA合成期)にあり、転写物の多いゲノム領域は転写装置と複製複合体が衝突する頻度が高いため、高レベルで発現しているAND-1などの複製フォークタンパク質が一時的な複製停止部位にリクルートされることでゲノムの安定性を維持していると推測される。2) Rif1:Rif1(Rap1-interacting protein) は動物細胞でDNA損傷の応答に寄与し、また複製タイミングを制御する核タンパク質である。マウスES細胞でヒドロキシ尿素による複製ストレスを与えるとRif1は30分後までに複製停止部位の近傍にリクルートされ、ストレスの長期化により細胞核全体に分布した。複製ストレスで誘導および消失するRif1のリン酸化部位各2箇所を新奇に同定した。また、Rif1の発現をES細胞で抑制すると、分化が弱く誘導されるものの、2細胞期特異的に発現する遺伝子群が強く誘導され、全体として分化マーカーの変動は少なかった。また体細胞でRif1の発現を抑制するとiPS細胞の作製効率が20%程度に低下した。以上のことから、Rif1は未分化細胞において複製ストレスに応答し、また、他のリプログラミング関連因子と連動してES細胞の未分化能やゲノムの安定性を維持すると推測された。
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Methods in Molecular Biology
巻: in press ページ: in press
British Journal of Cancer
巻: 109 ページ: 3042,3048
10.1038/bjc.2013.532
http://www.igakuken.or.jp/genome/