研究課題/領域番号 |
23570246
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
東海林 亙 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (40250831)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 神経発生 / 血管形成 |
研究概要 |
コレステロール合成系路に異常をもつゼブラフィッシュ変異体には、1)血管の走行パターンが正常であるが内腔のみが欠損、2)末梢感覚神経がいったんは正しく形成された後に軸索が変性、3)色素細胞が正常に分化した後での形態変化とメラニン産生の欠乏、といった多彩な異常が発生する。本研究ではこれらの異常を引き起こす代謝産物とその標的因子を同定し、機能発現に至る分子機構を解明することを通して、コレステロール代謝が制御しうる生命現象を包括的に理解することを目標としている。これまでの遺伝子・タンパク質を出発点とした研究とは異なる視点に立ち、発生・分化・組織の維持に関する新しいメカニズムを発見することが期待できる。平成23年度には東日本大震災で全滅したゼブラフィッシュ変異体の凍結精子からの復旧を行った。研究計画作成時には予期しなかった建物被害による飼育環境の悪化とこれに伴う腸管内寄生虫の被害が重なり、系統の復旧にほぼ1年間の時間を必要とした。また顕微鏡等の研究機器の修理・更新にも予想以上に時間がかかったために研究計画を大幅に見直すこととした。ゼブラフィッシュ変異系統の解析から、血管内腔の形成異常がコレステロール代謝経路の遮断に起因した細胞内輸送に関与する分子群の機能不全によって引き起されることを明らかにし、同様のメカニズムがマウスで機能しているか仮説を検討した。マトリゲル・プラグ法によりマウス腹部皮下に新生血管を誘導し、これに対してsiRNAによる遺伝子ノックダウンを行った。血管内皮細胞を抗体染色(CD31)、血管内腔を標識したレクチンの静注によって観察を試みたが、血管内腔の描出が不良なために期待された仮説の検証には至らなかった。そこで次年度以降の研究の研究展開を考慮し、血管内皮細胞にGFPを発現するTie2-GFPマウスを導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災からの復旧が遅れたことが大きい。研究者がコントロールできる範囲から逸脱した問題なので、いたしかたないと考える。一方、研究計画の後期に予定していた「ゼブラフィッシュ変異体で得られた発見を高等な脊椎動物に展開する」研究計画を前倒し遂行していることから、全体としては上記の進捗状況と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に予定していた「コレステロール代謝経路で生成される代謝産物が神経・血管・色素細胞に及ぼす作用を、ゼブラフィッシュ胚を用いて解析する」研究計画を平成24年度の研究計画と合わせて行う。すなわち、コレステロール合成経路で生成される代謝産物の欠乏が血管(内腔の形成異常)・神経(軸索変性)・色素細胞(形態とメラニン合成の不良)に異常を引き起こすことをゼブラフィッシュ変異系統の解析から明らかにし、それぞれの組織に異常を引き起こす原因となった代謝産物を特定し、その作用の背景となる分子メカニズムを明らかにする。さらに新たに導入したマウス個体の解析系を用い、ゼブラフィッシュで明らかにした作用機構がマウスで保存されているか否かを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していたゼブラフィッシュ変異系統を用いた研究を、震災復旧の遅れのために次年度に延期することによって生じたものであり、延期した研究に必要な経費として平成24年度請求額 とあわせて使用する予定である
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