研究課題
コレステロール合成経路は、細胞膜の構成成分でありステロイドホルモンの骨格材料でもあるコレステロールを産生することに加えて、中間産物から分岐した酵素反応によって、さまざまな代謝産物を生成して生命活動を支えている。私たちは前年度までの研究で、この合成系路に欠損をもつゼブラフィッシュ変異体に、器官・組織発生に多種多様な異常が引き起こされることを見いだしてきた。変異体モデルで発生異常を引き起こす原因となった代謝産物の同定と、代謝産物の標的因子、機能発現に至る分子機構を解明することによって、代謝系による生命現象の制御の実体を包括的に理解することが本研究の目標であり、これまでの遺伝子・タンパク 質を出発点とした研究とは異なる視点から発生・分化・組織の維持に関する新しいメカニズムを発見することが期待できる。平成24年度では、主としてコレステロール代謝異常が引き起こす血管形成異常の分子メカニズムについて研究を行った。コレステロール合成経路の中間代謝物から生成されるゲラニルゲラニル基の欠乏が低分子量Gタンパク質の活性を低下させることに起因することを明らかにし、さらに低分子量Gタンパクのなかでも、細胞内小胞輸送に関与するファミリー遺伝子が血管形成に必須であることを新たに見いだした。この作用はゼブラフィッシュでは発生期の体節間血管で、マウスでは皮下に侵入する新生血管で観察された。細胞内小胞輸送システムのなかでも、特にエンドサイトーシスを担う機能タンパクのノックダウンにより同様の作用を認め、エンドサイトーシスを主体とする血管形成制御システムの存在が予測された。
2: おおむね順調に進展している
血管形成に必須な代謝産物とその作用機序を明らかにすることができた。また、2種の脊椎動物モデル、ゼブラフィッシュとマウスで共通の血管制御システムの存在を新たに提唱できたことから上記の進捗状況と判断した。
コレステロール合成経路欠損により引き起こされる、神経変性の分子メカニズムを解明する。これまでのモルフォリーノ・アンチセンスオリゴによるアプローチに加えて、TALEN (Transcription activator like effector nuclease)法による遺伝子編集により特定の律速反応酵素を遮断し、神経変性の原因となった代謝産物を特定する。
次年度使用額は当初計画していた平成23・24年度の神経変性の研究を、震災被害のために血管形成の研究に変更したことにより生じたものであり、延期した神経変性の研究に必要な経費として、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
Neurosci. Res.
巻: 75 ページ: 69-75
doi: 10.1016/j.neures.2012.08.010.
Arterioscler Thromb Vasc Biol.
巻: - ページ: 掲載確定
http://www.idac.tohoku.ac.jp/ja/activities/research/project_programs/syoji/index.html
http://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/cellbio/Welcome.html