研究課題
前年度まではコレステロール合成経路に変異をもつゼブラフィッシュ変異体でみられた血管異常に着目し、疾患を引き起こす原因代謝産物を同定するとともにその作用機序について研究を行ってきた。またその途中経過では、コレステロール合成経路の中間代謝産物から生成されるゲラニルゲラニル産物の欠乏が低分子量Gタンパクの活性を低下させること、また低分子量Gタンパクのなかでも特に細胞内小胞輸送に関与する分子ファミリーが血管形成に必須となることを見いだしてきた。平成25年度においては、細胞内小胞輸送システムが血管形成に作用する分子機構について引き続いて解析を行った。細胞内小胞輸送の中でもとくに、エンドサイトーシスを担当する分子群が血管形成に重要であり、その作用はクラスリン非依存性・ダイナミン依存性であることを明らかにした。また血管内皮に特徴的なカベオリン依存性のエンドサトーシスの関与が認めれられ、これらの分子群の作用を抑制することにより、クラスリン非依存性細胞内小胞・カベオラ小胞からバキュオール形成・血管内腔形成へと連なる、新規の血管新生の制御モデルを想定するに至った。この仮説を検証するためにリアルタイムでの血管新生撮影を試みたが、既存の光学機器では十分な血管内腔の描出を得ることができなかった。このため研究期間を一年間延長し、高感度CMOSカメラを導入することによって血管内腔形成のタイムラプス解析を行うこととした。
2: おおむね順調に進展している
コレステロール代謝経路に異常をもつゼブラフィッシュ変異体の研究から、血管形成における新規の制御メカニズムを提言しうる研究成果を達成しつつある。一年間の延長申請を行ったが、初年度に東日本大震災の被害のあったことを考慮すると、おおむね妥当な進捗状況といえる。
これまでの研究成果によって、細胞内小胞輸送に依存した血管内腔形成の分子機構の存在が予測されており、これを遺伝子ノックダウンによる分子機能解析、in vivo タイムラプス解析からゼブラフィッシュおよびマウスの血管系の研究により確かなものとする。内腔特異的な蛍光標識と高感度CMOSカメラを導入し、またCRISPR/CAS法によるゲノム編集を行い、遺伝学的な解析を補強する。
平成25年度にコレステロール代謝異常下でのマウスの血管新生モデルの実験を行い、内腔の形成への影響を解析するとともに学会発表を行う予定であったが、血管内皮の形態を描出する蛍光タンパクの発現が微弱であったため、計画を変更して高感度CMOSカメラによる解析を導入することにした。このために未使用額が発生した。以上の理由から、高感度CMOSカメラによる血管内皮の解析と研究発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Curr Biol.
巻: 23 ページ: 843-849
10.1016/j.cub.2013.03.066