本研究課題においてはコレステロール合成経路に変異をもつゼブラフィッシュ変異体でみられた血管異常に着目し、疾患を引き起こす原因代謝産物を同定するとともにその作用機序について研究を行ってきた。また前年度までに、コレステロール合成経路の中間代謝産物から生成されるゲラニルゲラニル産物の欠乏が低分子量Gタンパクの活性を低下させること、また低分子量Gタンパクのなかでも特に細胞内小胞輸送に関与する分子ファミリーが血管形成に必須となること、さらにこの作用がクラスリン非依存性細胞内小胞輸送に強く関連することから、血管内腔形成における新規の分子機序を想定するに至った。 平成26年度においては、タイムラプス撮影によって上記の新規血管新生モデルの検証実験を行い、細胞内小胞の蓄積と内腔形成の関連を示唆する結論を得た。またマウスの新生血管形成においてこれらの血管形成モデルの関与の有無を検討した。具体的には血管内皮細胞をGFP標識するTie:2GFPマウスを導入し、マウス皮下に新生血管を誘導するマトリゲル・プラグ・アッセイを行い、同定された細胞内輸送関連因子のノックダウンを試みところ、上記因子の作用を抑制するsiRNAの存在下では血管侵入の減少・血管内腔の形成不良が観察された。これらの結果は小型魚類で見いだされた新規の血管形成機構がほ乳動物においても保存されることを示唆しており、今後さらに研究を深めていきたいと考えている。
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