研究課題
本研究は、胎生中期のAGM領域の未分化血球細胞に対するSox17強制発現より生じる細胞塊の特性および形成機構について詳細に検討し、大動脈の血管内皮細胞より未分化血液細胞を生み出すメカニズムを明らかにすることを目的する。平成25年度に実施した研究成果を以下に挙げる。1.Sox17強制発現細胞を移植したマウスの骨髄細胞を用いて、致死量放射線照射を施したマウスに二次移植を行った。その結果、二次移植を行ったマウスは移植後40日以内に死亡し、コントロール群に比べて脾臓の重量が2.2倍増加していた。さらに、common myeloid progenitor(CMP)が、二次移植マウスの骨髄内において増殖していることを示した。このことより、 Sox17を長期にわたり発現すると細胞に対して悪影響を及ぼすことが考えられる。2.Sox17と同じファミリーに属するSox18欠損マウスのAGM領域により得られた未分化血液細胞に対して、Sox17および同じファミリー分子であるSox7を標的としたshort hairpin (sh) RNAを導入すると、in vitroにおいて造血能の低下を見出した。このことは、Sox17およびSox7の発現が、通常のAGM領域での血液発生においても必要であることを示す。3.胎生中期のAGM領域より得た血管内皮細胞を、フローサイトメトリーにより分収し、Sox17を強制発現すると、コントロールで認める血液細胞の産生が著しく阻害され、血管内皮細胞様の細胞を多数認めた。この結果より、Sox17が血管内皮細胞に対して発現量が多い時は血管内皮細胞の増殖が起き、 Sox17の発現量が低下すると血液細胞が分化することが明らかとなった。血管内皮細胞より分化した血液細胞について、 Sox17の発現量を維持すると未分化性が維持されることから、AGM造血においてSox17の発現量と血液細胞および血管内皮細胞の運命決定に対する関係性が強く示唆される。
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Mol. Cell. Biol.
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