研究課題/領域番号 |
23570260
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
酒井 則良 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 准教授 (50202081)
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 精子形成 / 精原幹細胞 / 細胞培養 |
研究概要 |
本研究はゼブラフィッシュにおいて新規の精原幹細胞増殖因子を見つけ、それにより長期にわたり精原幹細胞培養できる系を確立することを目的とする。本年度は、ゼブラフィッシュデータベースから未報告のnanos遺伝子が見つかったため、その解析を進めた。マウスではNanos2を発現する精原細胞が高い幹細胞特性を持つことが明らかとなっているが、ゼブラフィッシュではそのようなマーカー遺伝子は見つかっていなかった。そこで、この未報告nanosに対して生殖細胞のない精巣を用いたRT-PCR解析とアミノ酸配列の系統解析を行ったところ、これがマウスのnanos2に相同することが示唆された。次に、この遺伝子のプロモーターにより緑色蛍光タンパク(GFP)を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュの作出を進めた。nanos2の配列を持つゼブラフィッシュBAC cloneに対してnanos2転写開始点付近へegfp遺伝子を組み込み、ベクターバックボーンへのtol2トランスポゾンカセットを導入し、それをtol2 transposase mRNAとともに1細胞胚に顕微注入した。現在、このnanos2::egfpトランスジェニック個体の成長を待っている段階である。精原幹細胞でのGFP発現を確認した後、この細胞で特異的に発現する遺伝子を解明できると考えている。 また、がん化した精巣が見つかったため、その精原幹細胞を培養したところ、正常の精原幹細胞に比べ2倍程度の期間培養できることが分かった。遺伝子導入においても正常精原幹細胞に比べて格段に効率よく導入できた。これは最終年度に予定していた応用実験に当たるもので、がん化精巣を得る方法を検討することにより、当初目的の精原幹細胞を用いた遺伝子導入魚の作出法に発展できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精原幹細胞の増殖因子の探索では大きな進展は見られなかったものの、幹細胞特性をもつ精原細胞のマーカーとして新規のnanos2が見つかり、そのプロモーターで緑色蛍光タンパクを発現するトランスジェニックフィッシュ作出の直前まで達成することができた。本年度、別の研究グループからゼブラフィッシュの未分化型卵原細胞の特異的な遺伝子としてnanos2が報告されており、本トランスジェニックにより精原幹細胞を同定できる可能性は極めて高い。この細胞を用いることで精原幹細胞特異的な遺伝子をこれまでよりも高い精度で単離できるものと考えられる。 また、がん化した精巣の精原幹細胞を用いることで、従来の培養系でも2倍程度長い期間培養可能となり、かつ効率よく遺伝子導入も分かった。これを用いることで応用例としての目標であった、精原幹細胞からトランスジェニック魚の作成をほぼ実現できる見込みが立った。
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今後の研究の推進方策 |
nanos2プロモーターにより緑色蛍光タンパクを発現するトランスジェニック魚を用いることで、精原幹細胞を純度高く単離できるため、精原幹細胞増殖因子については、この細胞標品を用いて再解析を行う予定である。また、がん化精巣を常時準備できる方法を確立する。すでにゼブラフィッシュではがんが多発するトランスジェニック系統が単離されているため、これを中心にがん化精巣の作出あるいは維持法を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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