研究課題/領域番号 |
23570262
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
木下 典行 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 准教授 (30300940)
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キーワード | アフリカツメガエル / 原腸形成 / 細胞接着 |
研究概要 |
動物の体の形作りにおいて原腸形成は発生初期に起きる重要な形態形成運動である。この運動により、中胚葉が外胚葉と内胚葉の間に入りこみ、脊椎動物の基本的な体制である3胚葉構造を作る。アフリカツメガエル胚の原腸形成では、背側中胚葉の細胞が、収斂伸長という細胞運動を起こすことにより組織が伸長する。この細胞運動には、細胞間の接着の制御が重要である。本研究では、細胞接着分子カドヘリンファミリーの一つ、PAPCの細胞内局在の制御機構を解析した。これまでPAPCタンパク質がGSK3βによりリン酸化され、それが引き金となって、ポリユビキチン化が起こること、そしてこのユビキチン化がPAPCの局在に重要であることを明らかにした。 ユビキチン化されたポリユビキチン鎖を形成できない変異ユビキチン遺伝子を発現させた。その結果、PAPCの細胞膜への局在が阻害された。さらに変異ユビキチンタンパク質を発現させた胚では、細胞間接着が阻害され、収斂伸長運動が異常になることが観察された。これらのことから、PAPCによるリン酸化とユビキチン化による制御が、原腸形成における組織の細胞運動に必須の役割を果たしていることが明らかとなった。 本研究では、ユビキチン化されたタンパク質の局在制御に関わると報告されているユビキチンシャペロン分子に注目した。いくつかのシャペロンを調べた結果、Valosin-containing protein (VCP)がユビキチン化されたPAPCの局在に関わっていることがわかった。現在その分子メカニズムを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユビキチン化されたポリユビキチン鎖を形成できない変異ユビキチン遺伝子を発現させた。その結果、PAPCの細胞膜への局在が阻害された。さらに変異ユビキチンタンパク質を発現させた胚では、細胞間接着が阻害され、収斂伸長運動が異常になることが観察された。これらのことから、PAPCによるリン酸化とユビキチン化による制御が、原腸形成における組織の細胞運動に必須の役割を果たしていることが明らかとなった。 本研究では、ユビキチン化されたタンパク質の局在制御に関わると報告されているユビキチンシャペロン分子に注目した。いくつかのシャペロンを調べた結果、Valosin-containing protein (VCP)がユビキチン化されたPAPCの局在に関わっていることがわかった。現在その分子メカニズムを解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ユビキチン化されたタンパク質の局在制御に関わると報告されているユビキチンシャペロン分子に注目した。いくつかのシャペロンを調べた結果、VCPがユビキチン化されたPAPCの局在に関わっていることがわかった。このタンパク質は、多様な機能が報告されているが、作用機序はわかっていない。今後は、VCPとPAPCの関係、ユビキチン鎖との相互作用を中心に解析を行っていく。また、VCPの発現調節も明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、アフリカツメガエルの維持、管理、また、大量の分子生物学的解析のため、技術支援員を雇用する。また、実験に使用する消耗品、試薬等に使用する予定である。
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