研究課題/領域番号 |
23570263
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
高橋 雄 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 室長 (60321858)
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キーワード | 発生・分化 / 遺伝学 / マウス / 体節形成 / 脊椎骨 / Uncx4.1 |
研究概要 |
24年度は、以下の研究を実施した。 1. 体節後半部のマーカー遺伝子Uncx4.1の遺伝子座に、Creリコンビナーゼ遺伝子をノックインするためのターゲティングベクターを作製した。これをES細胞に導入するためエレクトロポレーションを行ったが、現在のところ確実な相同組み替えクローンは得られていない。これについてはターゲティングベクターを数回設計し直し、再試行中である。 2. ノックインマウスの作製と平行して、体節後半部でβ-ガラクトシダーゼを発現するTg-Uncx4.1-LacZトランスジェニックマウスを用いて,体節から脊椎骨が形成される過程を解析した結果,頸椎と胸椎・腰椎では再分節化のパターンが異なることがわかった。このことは体節前半部/後半部の境界と再分節化の境界は必ずしも一致しないことを示唆している。 3. 野生型とMesp2ノックアウトマウスにおいて、Uncx4.1以外に硬節のマーカー遺伝子Pax1, Pax9、椎間板の分化マーカーFibromodulin, TGF-b3や関節マーカーGDF5, 軟骨分化に関連した遺伝子の発現を比較観察した。その結果、Mesp2ノックアウトマウスにおいても,椎体と椎間板の繰り返しパターンが形成されること、腰椎の部分では椎間板の密度が高く顕著に癒合していることがわかった。 4. Mesp2ノックアウトマウスとは逆に体節全体が前方化するRipply1,2 ダブルノックアウトマウスの脊椎骨についても、上記の椎間板の分化マーカー等の解析を行った。その結果、Ripply1,2 ダブルノックアウトマウスにおいても、不規則な椎体と椎間板の繰り返しパターンが形成されること、腰椎の部分では椎間板がほとんど形成されないことがわかった。これらの結果から、体節の前後極性は椎体と椎間板の繰り返しパターンの形成に必須ではないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Uncx4.1-Creノックインマウスの作製は遅れているが、遺伝子改変マウスの作製には一年以上要することが珍しくなく、新たなベクターの構築を検討中である。Uncx4.1-Creノックインマウスに準ずるTg-Uncx4.1-LacZトランスジェニックマウスについては、野生型とMesp2ノックアウトマウスの遺伝学的背景で脊椎骨の形成過程について知見が得られている。また椎間板と椎体の分化に関するマーカー解析も、Mesp2ノックアウトマウスとRipply1,2 ダブルノックアウトマウスの腰椎領域では対照的な椎間板の分化状態がみられるなど、興味深いデータが蓄積している。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづきUncx4.1-Creノックインマウスの作製・解析を進めるとともに、体節全体が前方化するRipply1,2 ダブルノックアウトマウスやNotchシグナルの振動そのものが存在しないDll1ノックアウトマウスの脊椎骨形成過程についても、形態学的解析およびマーカー遺伝子等の発現解析を行う。これにより体節の分節化・前後極性と脊椎骨の分節化の関係をさらに解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度はマウスの作製と解析を中心に、交付請求額よりも少額の使用であったが、25年度はひきつづき作製とともに解析データを拡張していく予定である。また、Pax1の強い発現が椎間板領域と対応していることから、25年度には新たにTbx18の遺伝子座にPax1遺伝子をノックインし、体節前半部でPax1を発現するマウスを作成し、脊椎骨形成に対する影響を解析する。それにより体節の前後極性と椎間板の分化の機構についてさらなる知見を得る。
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