研究課題/領域番号 |
23570264
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
丸山 千秋 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 主席研究員 (00281626)
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研究分担者 |
岡戸 晴生 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 副参事研究員 (60221842)
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キーワード | 大脳皮質形成 / 神経細胞移動 / RP58 / Ngn2 / Rnd2 / 転写制御 / 脳発生 / 子宮内エレクトロポレーション |
研究概要 |
発生期大脳皮質は脳室帯(VZ)で生まれた新生ニューロンが、まず多極性細胞から双極性細胞へと形態を変化させる。続いてロコモーションモードに変わって放射状グリア繊維に沿って脳表に向かって移動後、成熟する。RP58はZincフィンガーモチーフとPOZドメインを持つ転写抑制因子で、この遺伝子欠損マウスは脳形成に重篤な障害を持ち、出生致死となる。本研究では、RP58のKOマウスおよびコンディショナルKOマウスを用いて子宮内エレクトロポレーション法を適用し、新生ニューロンの移動を解析した。その結果、RP58因子が新生ニューロン多極性から双極性細胞への変換およびロコモーション移動過程に必須であることを見いだした。この移動障害はRP58発現ベクターを導入することでレスキューされた。次にこの機能を担う下流標的遺伝子の検索を行い、神経分化のマスター転写活性化因子であるNgn2を同定した。RP58はNgn2によって発現が誘導されることがわかっていることから、これら2因子間には転写制御レベルのフィードバック制御があることがわかった。すなわちRP58(-/-)脳においてはNgn2の発現が抑制されずに増加している。そこでこのRP58(-/-)で見られる細胞移動障害の表現型が、標的遺伝子であるNgn2の過剰な発現を抑えることでレスキューされるかどうかをコンディショナルなRNAi実験系を用いて解析し、レスキューされることがわかった。Ngn2の下流にはRhoシグナルに関与してアクチン細胞骨格を制御するRnd2があり、Ngn2が増えてしまうことでこの制御が乱れることが移動障害の一因であることも考えられる。実際Ngn2の過剰発現で見られる移動障害も、Rnd2を抑えることで部分的にレスキューされることから、RP58がNgn2-Rnd2系のシグナルを適正に保つことで新生ニューロン移動を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RP58遺伝子のノックアウトマウスの脳形成障害の原因の1つが新生ニューロンの移動障害であることを実験的に証明し、その分子メカニズムを明らかにすることができ、論文発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はさらに他の下流ターゲットを同定し、RP58がどのようにして多極性細胞から双極性細胞への形態変化を制御しているのかについてタイムラプスイメージング法も駆使してより詳細に解析する実験を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に分子生物学用試薬、消耗品、培養器具、培地、抗体等の購入に充てる。また、研究に必要書籍の購入や、学会、シンポジウムの出張旅費にも使う予定である。
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