研究課題
24年度は本研究の目的である、始原的歩帯動物におけるHox/ParaHox遺伝子群の発現、構造、機能の包括的理解へ向け、以下の研究を行った。1, ヒメギボシムシ(P. flava)Hox遺伝子クラスターの構造解析:23年度に解読した、Hox遺伝子クラスターのゲノム配列について、シンテニーやトランスポゾンおよび詳細な分子系統解析などを行い、米国のグループと共同で論文発表した。2, ヒメギボシムシParaHox遺伝子群の発現とクラスター構造の解析:23年度に解読した、ParaHox遺伝子クラスターのゲノム配列について、シンテニーやトランスポゾンおよび詳細な分子系統解析などを行い、さらに、他の多くの生物のゲノム情報を収集してParaHox遺伝子クラスターの状況を網羅的に調べ、脊索動物以外ではヒメギボシムシが始めて、intactなクラスター構造をもつ例となる事を確認した。台湾、イタリア、日本、米国の研究グループと共同で解析を終え、論文を投稿し、審査中である。3, ニッポンウミシダ(O. japonicus)ParaHox遺伝子群の発現とクラスター構造の解析:遺伝子発現の定量的解析のため、定量PCRの実験系を検討、確立した。定量解析に使用するプライマーの検討を行った。クラスター構造解析のためのBACライブラリースクリーニングに用いるプライマーの検討を行った。BACクローン塩基配列全長解読のため、次世代シークエンサー(Ion PGM)の使用条件を検討、確立した。以上の解析により、P. flavaにおけるHox/ParaHox遺伝子群の状況は、脊索動物との共通祖先におけるクラスターに近い状態が保存されていると推測された。
2: おおむね順調に進展している
1. P. flavaのHox/ParaHox遺伝子クラスターについて、in silicoでのバイオインフォマティクス解析に予想外に多くの時間を要したが、P. flavaについてはおおよそ解析を終え、Hox, ParaHoxそれぞれについて、論文投稿(一つは受理公開済)に至っている。2. 所属先が変わり、定量PCRや遺伝子発現解析や次世代シークセンサー等について、実験系の検討から始めねばならず、多くの時間を要したが、確立に至った。
現在ニッポンウミシダO. japonicaのゲノムプロジェクトが進行中であるため、25年度は引き続きO.japonicaのParaHox遺伝子に関する研究を集中的に進めたい。クラスター構造の解析のためのBACライブラリのスクリーニングを開始し、該当クローンが得られ次第、次世代シークエンサーによる全長解読を開始する。また、定量PCRによる発生段階毎の発現量解析と、WISH法による発現局在解析を行う。
24年度はバイオインフォマティクス解析と論文執筆、および発現解析やクラスター解析の条件検討が主となり、実際のサンプルを用いた解析は次年度以降としたため、主に試薬類に必要な研究費は繰り越した。25年度の研究費は、O.japonica ParaHox遺伝子群のBACスクリーニングおよび全長配列解読(プライマー、次世代シークエンサー試薬)、発現解析に関連する試薬(PCR試薬、プライマー、遺伝子クローニング、シグナル検出等)およびサンプルの手配(交通費、輸送費)に関連するものが中心となる予定。また、データの整理、 解析をより効率的に進めるために必要なアプリケーションソフト等も必要になる見込みである。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Current Biology
巻: Volume 22, Issue 21 ページ: 2053-2058
10.1016/j.cub.2012.08.052