研究課題
平成25年度は本研究の目的である、始原的歩帯動物におけるHox/ParaHox遺伝子群の発現、構造、機能の包括的理解へ向け、以下の研究を行った。1. ヒメギボシムシ(Ptychodera flava)ParaHox遺伝子群の発現とクラスター構造の解析: 平成24年度に投稿した、ParaHox遺伝子クラスターのゲノム構造と発現パターンについての論文の非受理をふまえ、データと本文の再整理を行い、台湾、イタリア、日 本、米国の研究グループと共同で再投稿して受理、発表に至った。本種がintactなParaHox遺伝子クラスター構造を持ち、発現パターンにおいても、動物一般で見られるものと共通性があることを報告した。2. ニッポンウミシダ(Oxycomanthus japonicus)ParaHox遺伝子群の発現とクラスター構造の解析:遺伝子発現の定量的解析のため、各発生段階の胚のサンプリングを行った。クラスター構造解析のためのBACライブラリースクリーニングを行い、ParaHox遺伝子群を含むいくつかのBACクローンの候補が挙がり、現在同定に向け解析を進めている。Whole mount in situ ハイブリダイゼーション(WISH)による発現パターンの解析も開始し、動物一般で見られるパターンとの類似性について、興味深い結果が得られている。ふ化前の胚におけるWISH法の確立へ向け、卵膜除去の方法の検討を行った。結果、効果的に未受精卵の卵膜を除く条件を見つけたが、受精や発生への影響の評価は今後の課題となった。3. ニッポンウミシダParaHox遺伝子の機能解析へ向け、未受精卵へのマイクロインジェクション法の検討を行い、少なくとも卵内に任意の試薬を導入できることを確認したが、受精や発生への影響の評価は今後の課題となった。
3: やや遅れている
ニッポンウミシダのBACスクリーニングは、恐らく繰り返し配列が原因で目的シングルクローンの同定には至っていない。Whole mount in situ ハイブリダイゼーション(WISH)では各遺伝子がいつどこで発現するかと共に、発現部位の重複関係を明らかにすることが重要であるが、蛍光染色では自家蛍光が非常に強く、効果的なシグナル検出法の検討が必要となっている。また、ふ化前の胚のWISHでは卵膜の除去が必要であり、その条件検討に時間を費やした。
現在ニッポンウミシダのゲノムプロジェクトが進行中であるため、平成26年度はゲノムプロジェクトチームとの連携を図りながら、引き続きニッポンウミシダのParaHox遺伝子に関する研究を集中的に進めたい。BACクローンの同定が終わり次第、次世代シークエンサーによる全長解読を開始する。また、定量PCRによる発生段階毎の発現量解析と、WISH法による発現局在解析を行う。WISHの蛍光観察においては、自家蛍光の解決のため、様々な透明化の方法などの検討を行う。また、卵膜除去やマイクロインジェクション法の検討を引き続き行う。
目的BACクローンの同定に至らなかったため、次世代シークエンサーによる全長解読に必要な試薬の購入を見送った。目的BACクローンが同定され次第、次世代シークエンサーの試薬を購入し、全長解読を進める。WISH解析とその条件検討に必要な試薬を購入する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
BMC Evolutionary Biology
巻: 13 ページ: 129
10.1186/1471-2148-13-129