研究概要 |
研究成果の概要 雌雄同体、雄性発生シジミの起源について推定するとともに、クローン性について解析を行った。また雌雄同体種の集団に雄が見いだされたので、その起源と繁殖法についても調査した。 1)雄型はミトコンドリア解析の結果から、同体型から派生したと考えられる。しかし同所的に生息する雌雄同体個体から生じたものではないことが明らかになった。2)雌雄同体雄性発生種は雌雄異体種から進化の過程で生じたいと考えられるが、セタシジミが直接の起源であるかどうかは不明である。中国産の雌雄異体集団と雄性発生シジミがきわめて近縁であることが判明した。3)雄型の方が核遺伝子の遺伝的変異性は高いと考えられる。しかし、雄においてもマイクロサテライト7座において、遺伝子型が一致する個体もあった。4)雌雄同体型と雄型のミトコンドリアは一致していた個体において、核のMS,28SrDNAは全く共有されていない個体が多く見いだされた。 これらの結果は、核とミトコンドリアの系統の不整合,すなわち、精子による卵乗っ取りが、雄性発生でしばしば生じていること、さらに雄型は独立した系統であることが示唆された。雄型は、雌雄同体型から雄、への転換がおこらないとするならば、「雄型は雌雄同体の卵を乗っ取って繁殖している」、という仮説には今回の研究で得られた結果は矛盾しなかった。今後の更なる実証が必要であるが、雄と雌雄同体という動物界ではまれな繁殖方法について新規知見を得ることができた。
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