研究課題/領域番号 |
23570271
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
早川 敏之 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80418681)
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研究分担者 |
安形 高志 独立行政法人理化学研究所, システム糖鎖生物学研究グループ, チームリーダー (40371017)
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キーワード | ヒトの進化 / ヒト化 / シアル酸 / 受容体 / 遺伝子変換 |
研究概要 |
ヒトSiglec-11はシアル酸受容体であり、Siglec-16遺伝子による遺伝子変換によってヒト特異的にシアル酸認識能が変化したと考えられる。このヒトでのシアル酸認識能の変化の進化的な検討のため、ヒト、チンパンジー、ゴリラのSiglec-11とSiglec-16のシアル酸認識能を調べた。その結果、各Siglecの間でシアル酸認識力には違いがあるものの、シアル酸認識特異性は同じであることがわかった。ヒトSiglec-11とSiglec-16は、マクロファージや脳ミクログリアといった同じ細胞で発現しており、Siglec-11とSiglec-16はシアル酸認識特異性ばかりでなく発現部位も同じである。そして、Siglec-11は抑制性受容体、Siglec-16は活性化受容体とその働きは正反対であることから、Siglec-11とSiglec-16は細胞機能の微調整に関わるペア型受容体と考えられる。 また、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、テナガザル、ヒヒのSiglec-11遺伝子とSiglec-16遺伝子の配列を解析したところ、各霊長類系統で遺伝子の上流部とシアル酸認識ドメインをコードするエクソンを含む領域にて、遺伝子変換がおこっていることがわかった。このため、遺伝子変換によってSiglec-11とSiglec-16のシアル酸認識特異性と発現が同じになっているとみられ、遺伝子変換はペア型受容体を維持するゲノムメカニズムと考えられる。 本成果は、Siglec-11がSiglec-16とのペア型受容体として進化してきていることを示し、ヒトの進化におけるSiglec-11の役割を考える上で、ペア型受容体という視点を提供する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的にて提示した4つの課題のうち、Siglec-11、Siglec-16のシアル酸認識能の進化について、知見が得られている。また、ST8Sia2のヒト特異的な変化について研究を進め、ヒト特異的な変化のおこった時期、ヒト以外の霊長類での特殊な進化の有無、ヒト特異的な変化に対する自然選択について予備的な知見が得られている。このため順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画にもとづき、DNA配列の決定と配列解析をおこない、得られた成果を論文等に発表する。なお研究分担者の希望により、平成24年度は組換えタンパク作製とシアル酸認識能の解析を重点的におこなった。それにともない、年度間で実施内容の一部入れ替えをおこなった。この入れ替えは研究計画を変更するものではない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度実施予定のDNA配列決定と解析の一部と、平成25年度実施予定の組換えタンパク作製とシアル酸認識能の解析の入れ替えにともない、平成24年度の実験に関わる研究費の一部を平成25年度に繰り越し使用する。これに関連しない実験および解析に必要な研究費は、計画通りに使用する。
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