研究課題
葉緑体はランソウ様の原核生物が宿主細胞に共生して生じた。葉緑体ゲノムは進化の過程で多くの遺伝子を宿主の核ゲノムへと移行させてきた。この葉緑体ゲノム進化の中間段階では、葉緑体ゲノムと核ゲノムの両方に存在する相同遺伝子が同時に機能し、その後、葉緑体ゲノムに存在する遺伝子の偽遺伝子化・消失がおこる。しかし、この偽遺伝子化プロセスについては不明のままである。本研究は、偽遺伝子化プロセスの一つとして葉緑体mRNAの翻訳活性が著しく低下していることを明らかにするため、核と葉緑体の両ゲノムに存在することが明らかとなっているタバコrps16遺伝子をモデルに研究を行う。本年度はタバコ葉緑体リボソームに含まれるS16タンパク質が、核ゲノム由来か葉緑体ゲノム由来がのどちらであるかを確認するため、以下の実験を行った。 (1)核由来S16タンパク質および葉緑体由来S16タンパク質抗体の作製 葉緑体由来S16タンパク質については、ホウレンソウの葉緑体S16タンパク質を認識する抗体をSubramanian教授より分与して頂くことができた。核ゲノム由来S16タンパク質抗体については、核ゲノムに存在するrps16遺伝子4種をクローニングし、リコンビナントタンパク質の作製を試みたが、リコンビナントタンパク質を得ることは困難であった。そこで、4種の核由来S16タンパク質間で保存性が高く、葉緑体由来S16タンパク質には存在しない領域をターゲットにしたペプチド抗体を作成した。 (2)葉緑体リボソームタンパク質の解析 タバコ葉緑体よりリボソームタンパク質を抽出し、上記(1)で作製した抗体を用いたウェスタン解析を行ったところ、葉緑体リボソームには核由来のS16タンパク質が含まれていることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していた抗体作製について、核由来のS16タンパク質抗体はペプチド抗体を作成せざるを得なかったが、葉緑体由来のS16タンパク質抗体は既存のものが入手できたので、当初計画から遅れることなく研究を推進することができた。
本年度の研究が当初計画通り順調に進展したので、今後も当初計画に沿って研究を推進していく。
当初計画通りの使用予定である。
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Plant Physiol.
巻: 157 ページ: 518-530
10.1104/pp.111.178897