高温適応進化を促進する相互作用の解析に於いて、(1) 相互作用分子の同定・解析、(2) 相互作用に重要な変異の解析、を中心に研究を実施し、以下の成果を得た。 (1) 相互作用分子の同定・解析 開発した相互作用分子の高感度バイオアッセイ系を用いて、増殖誘導活性を示す45℃高温適応大腸菌の培養上澄みからカラム法での精製により取得した活性分画の構造解析を実施し、活性分子の一つとして乳酸を同定した。乳酸による増殖誘導活性も確認され、またバイオインフォマティクス解析により相互作用が消失する45℃完全適応(45℃培養236日目)までに乳酸の細胞内取り込みに機能するlactate permease に変異が生じていることを確認した。以上のことから乳酸を相互作用活性物質の重要な候補として考えるに至った。 (2) 相互作用分子の機能解析(相互作用解析) 昨年度、45℃適応108日目までの大腸菌で明確な相互作用による増殖刺激が確認された。今年度は108日目までに導入される6カ所の変異がどのように相互作用に寄与しているかをゲノム変異を変異操作の痕跡を残さず野生型に操作可能なscarless法による組換えにより、変異部位を野生型に戻した株を構築し、その機能解析を適応度評価により行った。その結果、菌体濃度依存的に45℃での増殖が生じるようになる変異候補の同定に成功した。
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