研究課題
霊長類の脳の特徴を部位特異的遺伝子発現の観点から明らかにするため、0歳、1歳、成体のマカクの中枢神経系10部位における約2万個の遺伝子発現を網羅的に解析した。どの部位においても、生後発達段階で有意に発現量が変動した遺伝子は約1千個(5%)であった。10部位全部で共通して変動した遺伝子は32個、大脳新皮質7領域では共通して変動し、小脳や大脳基底核、海馬で変動しなかった遺伝子は26個であった。共通した機能等を有する複数の遺伝子をまとめた遺伝子セット単位で発現量の変動を分析するGSEA解析を適用した結果、発達のどの段階においても大脳新皮質の方が海馬よりも多く発現している遺伝子セットはあったが、海馬の方が大脳新皮質よりも多く発現している遺伝子セットはなかった。新皮質は、海馬と共通する遺伝子発現以外に、新皮質固有の遺伝子発現を付加していることが明らかになった。新皮質7領野間の遺伝子発現の差異は、幼若期には小さく、成体で最大となった。この傾向は、一次視覚野と連合野の間で最大であった。一次視覚野では成体になると発現が減少する遺伝子セットが多く、連合野では成体になると発現が増大する遺伝子セットが多かった。461個の転写因子遺伝子に関して、髄鞘化時期の早い新皮質領野、遅い新皮質領野での発達様式を検討した。髄鞘化の結果を反映する転写因子遺伝子は11個(高度に髄鞘化している状態で多いもの6個、少ないもの5個)あったのに対し、髄鞘化の過程で増加ないしは減少するような発現変動をする転写因子遺伝子は存在しなかった。髄鞘化の結果を反映する転写因子に関して、免疫組織化学的解析を進めている。
3: やや遅れている
霊長類における解析は進みつつあるが、それ以外の動物に関する解析はまだ行えていないから。
これまでに特徴的な発現様式が明らかになった転写因子に関し、免疫組織化学的解析を進める。転写因子以外に特徴的な発現をしている遺伝子、関連するパスウェイの重要分子に関しても免疫組織化学的解析を進め、これらを取りまとめる。対象分子が多く、系統間差の解析のためには抗体の交差性の検討に多大な時間を要するため、解析は霊長類内に集中させる。
パスウェイ解析、組織学標本の作製と画像解析を精力的に進めるのに用いる。一次抗体、二次抗体等の試薬、ソフトウェア使用ライセンス料、記録媒体等を購入する。遺伝子発現解析に用いているソフトウェアのライセンスが研究開始から2年間で切れるが、3年目に当たる次年度に行うべき追加解析があることが24年度後半に明らかになった。そのため、24年度の節約により必要な金額の約半分を残し、25年度分と合わせて契約更新に充当することとした。
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Neurochemical Research
巻: 38 ページ: 133-14
10.1007/s11064-012-0900-4
Ultrasound in Medicine & Biology
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10.1016/j.ultrasmedbio.2012.02.009