研究課題
老齢マカク、若齢マカクの海馬および前頭前野の遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法で検討した。炎症反応、免疫反応に関わる遺伝子群の発現は雌雄、部位を問わず増加し、ミトコンドリア機能に関わる遺伝子群の発現は雌雄、部位を問わず減少していた。海馬における雌マカクの遺伝子発現の加齢変化をヒトの老齢女性のものとPAGE法を用いて比較したところ、ヒトでもマカクでも炎症反応、免疫反応に関わる遺伝子群の発現は増加し、イオン輸送に関わる遺伝子群の発現は減少していた。ヒトでは老化によってミトコンドリア機能の強化、再髄鞘化を示唆する遺伝子発現増加があり、マカクではミトコンドリア機能の低下、脱髄を示唆する遺伝子発現減少が見られるという種差があった。0歳、1歳、成体のマカクの中枢神経系10部位における約2万個の遺伝子発現を網羅的に解析した。どの部位においても、発達段階で発現量が変動した遺伝子は約1千個(5%)であった。GSEA解析を適用した結果、新皮質は、海馬と共通する遺伝子発現以外に、新皮質固有の遺伝子発現を付加していることが明らかになった。新皮質7領野間の遺伝子発現の差異は幼若期には小さく、成体で最大となった。461個の転写因子遺伝子に関して、髄鞘化時期の早い新皮質領野、遅い新皮質領野での発達様式を検討した。髄鞘化の程度と発現量が相関する転写因子遺伝子は11個あったのに対し、髄鞘化の過程で増加ないしは減少するような発現変動をする転写因子遺伝子は存在しなかった。髄鞘化の程度と発現量が相関する11個の遺伝子を起点としてパスウェイ解析を行ったところ、グリア細胞での遺伝子発現、髄鞘化へのエストロゲンの関与を示唆する結果が得られた。転写因子の一部について免疫組織化学的解析を行った。レチノイン酸受容体βとプレグナンX受容体に関しては、小型から中型のニューロンとグリア細胞に弱く散発的な発現が見られた。
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PLoS One
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Journal of Neurophysiology
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http://kyouindb.iimc.kyoto-u.ac.jp/j/gI9wX