この研究は,体性感覚や方向認知の特性を操作系のデザインへ適切に反映させることにより,安全で操作しやすいヒューマンインタフェースの構築を目指すものである.そのため2つのサブテーマ,すなわち1)身体を基準とする操作方向-出力イメージの認知的適合性に関する操作タスク実験と脳内活性化部位の変化に関する生理学的検討,および2)手ごたえ・触感が操作パフォーマンスや心理に与える影響に関する実験から構成される. サブテーマ1については,まず1年目に回転ノブを操作具とする実験装置を試作し,回転操作を利き手と非利き手で行う際のパフォーマンスおよび認知について検討した.その結果,自己中心の左右と客観的な左右の認知の違いを見出し,利き手は手の局所座標系に基づく方向認知をしていることが示唆された.続く2年目は,利き手/非利き手の特性に注目し,反応時間とパワー(力の発揮速度)について利き手による影響を調べた.その結果,反応時間は非利き手,パワーは利き手の方が優位であることが示された.さらに3年目は生理学的な検討として,利き手の違いによる方向認知の反応速度とNIRS計測に基づく脳内活性化部位の違いを捉える実験を試みた.その結果,利き手の優位性と脳内活性化パターンとの対応が示唆され,それに基づく方向認知の負荷を捉える可能性が示された. サブテーマ2については,まず1年目に触力覚提示装置とパソコンを用いて開発したバーチャルリアリティシステムによる仮想ボタン操作実験により,クリック感を与える因子として,ボタンの押込み量,反力,反力の抜け具合の有効な組み合わせのあることを確認した.続く2年目および3年目には新たに接触力センサーも導入し,手の体性感覚フィードバックがボタン入力操作のパフォーマンスに及ぼす効果について定量的に検討し,その適切な活用がパフォーマンス向上に有効であることが示された.
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