研究課題/領域番号 |
23580001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野寺 康之 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (80374619)
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キーワード | 雌雄異株 / 性決定遺伝子 / 性染色体 |
研究概要 |
ホウレンソウの雄性決定遺伝子を含む染色体領域の減数分裂時の組換え抑制について検証するために,1000個体以上の分離集団を用いて雄性決定遺伝子と6個の性連鎖SCARマーカーとの間における組換え頻度を調査した.その結果,当該遺伝子とマーカーとの間の組換え型個体は見出されなかった.さらに,世界各地から収集されたホウレンソウ遺伝資源および品種(合計30アクセションおよび4品種)においても,雄性決定遺伝子は前述の性連鎖SCARマーカーと強固に連関していることを確認した. 雄特異性が示された6個のSCARマーカー(雄特異的マーカー)を用いて,選抜されたBACクローン(合計25)の中から,7個を選んで(総全長600Kbp)の塩基配列を決定した.その結果,この領域からレトロエレメント様配列が頻繁に見出されることが判った.その頻度はホウレンソウと近縁の両性花植物であるテンサイのゲノムと比べて,ホウレンソウ雄特異的ゲノム領域の方がおよそ3倍高い.さらに,雄特異的領域は,約70%が内部重複している配列に占められており,高コピー配列と低コピー配列がモザイク状に並んでいることも判明した.一方,ホウレンソウ雄特異的ゲノム領域の遺伝子密度は1gene/74.9kbpと見積もられたが,この値はホウレンソウの1.3倍のゲノムサイズを有するテンサイの平均遺伝子密度(1gene/11kbp)と比べて極めて低い.レトロエレメント様配列および反復配列に富んでいることや遺伝子密度が低いという特徴は,これまでにも多くの動植物の性染色体(YもしくはW)における雄もしくは雌特異的領域から見出されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に今後の方針として掲げた以下の点を達成することができたので、「おおむね順調に進展している」という評価を与えた。 →ホウレンソウの雄性決定遺伝子座周辺の染色体領域の減数分裂時における組換えが完全に抑制されていることを示すデータを揃えられたこと →当該領域のうち約600kbpの領域の塩基配列を決定し,この領域を塩基配列レベルで詳細に特徴づけることに成功した
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今後の研究の推進方策 |
1 雄特異的AFLPマーカーの開発と雄特異的BACクローンの単離を行い,最終的には雄特異的領域をカバーするBACコンティグの構築を行う. 2 ホウレンソウと同じアカザ科のテンサイのゲノム情報(高密度EST-SNPマーカー連鎖地図およびドラフトゲノム配列)を利用して,間性遺伝子に近接する分子マーカーの開発を行う.さらに、これらのマーカーを活用して間性遺伝子座をカバーするBACコンティグの構築を行う. 3 間性遺伝子座乗領域の精密マッピングを行うとともに,間性決定遺伝子コード候補領域を推定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
ホウレンソウのY染色体における雄特異的AFLPマーカーの新規開発,BACクローン選抜およびコンティグ作成に必要な消耗品購入費に充てる. さらに,研究補助員への謝金、研究報告旅費および投稿論文校閲費にも研究費を充てることを予定している.
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