本研究では、以下の手順で「動原体機能低下系統を利用した半数体育種法の確立」を計画した:(1)動原体機能低下系統の作出:内在性CENH3遺伝子の発現をRNAiにより抑制すると共にGFPを融合したCENH3を導入し、動原体機能を低下させる、(2)動原体機能低下系統を用いた半数体の作出:動原体機能低下系統と野生系統の交配により半数体を得る。 平成25年度は、平成24年度に「GFP融合CENH3発現コンストラクト」を導入し動原体特異的にGFPが局在したタバコおよびトマト形質転換体に対して、「内在性CENH3発現抑制コンストラクト」を導入しRNAiによる発現抑制が起きているかをRT-PCR法により確認したが、CENH3の発現が有為に減少している形質転換体は得られなかった。植物を材料に用いたRNAiによるCENH3の発現抑制は、これまで1例のみシロイヌナズナで報告されており、この事例の場合、全長ORF(531 bp)のマイナス鎖を発現する発現抑制コンストラクトが用いられていた。他の遺伝子のRNAiによる抑制の報告では200 bp程度の長さの2本鎖RNA領域をもつRNAiコンストラクトから効果が見られていたので、本研究では180-295 bpサイズの2本鎖RNA領域をもつRNAiコンストラクトを用いた。本研究でRNAiコンストラクトによる十分な発現抑制が観察されなかったのは、これらの2重鎖RNA領域の長さが不十分な可能性がある。 同時に平成24年度より継続している「GFP融合CENH3発現コンストラクト」を導入し動原体特異的にGFPが局在するミヤコグサ、イネおよびシロイヌナズナ形質転換体の作出では、シロイヌナズナで目的の形質転換体が作出できた。現在この形質転換体に対して、タバコおよびトマトと同様に内在性CENH3遺伝子の発現抑制を試みている。
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