本研究は、シロイヌナズナで構築されたFOXハンティングシステムを用いて、セイヨウミヤコグサ由来のユニークな根培養系(スーパールート)へ機能遺伝子をランダムに導入し、シロイヌナズナ由来の遺伝子がマメ科植物における根の成長と分化および根粒形成に対して影響をもたらす新規な遺伝子の探索を行った。 これまでに作出された130個体において、導入された遺伝子配列の同定と発現解析を行った結果、約70%の個体において同定された。この同定された個体について、形態的特性(草丈、地上部新鮮重、総根長)について調査を行った。その結果、形態的特性のいずれの項目においても非形質転換体と比べて有意に高いものが2個体存在した。これらの個体について、地下部諸形質の調査(総根長、平均根径、地下部新鮮重)と根粒形成試験を行ったところ、地下部諸形質においては明瞭な差は確認されなかったが、根粒着生数が有意に少ない個体が確認された。本年度は、これらの個体から採種することを目的として、近縁種である4倍体ミヤコグサとの交配を試みた。その結果、1個体からのみ種子の形成が見られ、この種子より得られた植物体からDNAを抽出しPCR にて導入遺伝子の有無を確認したところ、目的の位置にバンドが確認された。一方、この実験期間中に得られたデータを元に画像を含めたデータベースを作成し、NBRPミヤコグサ・ダイズのLegumeBaseへ登録する準備を整えた。 これらの一連の調査より、生育が旺盛でバイオマスを増加させる候補遺伝子が見いだされたことから、今後のダイズにおける生産性を向上させる分子育種を展開するための基盤整備の一部を構築することができた。
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