研究課題
イネの開穎は、内・外穎の鉤合の解除、鱗被の膨潤、花糸の伸長、葯の開裂、柱頭の展開といった秩序だった一連の運動によって構成されている。本研究では、開穎に関与する遺伝的メカニズムを明らかにすることを目的とする。spw1-cls1は鱗被と雄蕊のアイデンティティを決定する転写因子SPW1のアミノ酸置換により、鱗被の形態が異常となり、開穎できなくなった変異体(閉花性変異体)であるが、これとは異なるメカニズムによる変異体を8系統同定した。これらのうち1系統はSPW1の新規ミスセンスアリル(spw1-cls2)であった。cls1型SPW1タンパクがパートナータンパク質であるMADS2と結合できないのに対し、cls2型SPW1は正常にMADS2と結合した。しかし、cls2型SPW1とMADS2とのヘテロ二量体は、標的DNAへの結合能が低く、このことが閉花性の原因と考えられた。また、spw1-cls1を変異原処理して得たM2世代を圃場で栽培し、spw1-cls1のサプレッサーまたはエンハンサー変異体をスクリーニングし、候補系統を得た。一方、鱗被形成に関与しない新規閉花性変異体H193mtの原因遺伝子のマッピングを進め、第1染色体短腕上の250kbの領域に絞り込んだ。H193mtはやや短粒であるため、さまざまな短粒変異体を網羅的に栽培し、短粒性=閉花性となるかどうかを検証した。その結果、円粒形で鱗被の小さい一部の短粒変異体だけが閉花性を示したが、H193mtはこのカテゴリーには含まれず、既知の短粒型閉花性変異体とは異なるものと考えられた。今後さらにH193mtの原因遺伝子の単離を進める。また、RNAi法やレポーター遺伝子解析により、MADS32遺伝子がMFO1やLHS1遺伝子と協調して内外穎の鉤合部を構築する新たな開穎装置形成遺伝子であることを明らかにした。
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北陸作物学会報
巻: 48 ページ: 31-33