研究課題/領域番号 |
23580014
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研究機関 | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
研究代表者 |
小田 賢司 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 研究員 (10344409)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | イネFOXシロイヌナズナ / アントシアニン / F-boxタンパク質 / カルコン合成酵素 |
研究概要 |
イネの完全長cDNAを過剰発現する形質転換シロイヌナズナ(イネFOXシロイヌナズナ)の大規模ライブラリに見出された新規優性アントシアニン抑制変異体R10933の原因遺伝子であるイネF-box遺伝子は、これまでの予備試験で、カルコン合成酵素(CHS)と結合することが酵母2-ハイブリッド法により示唆されている。そこで、F-boxタンパク質がCHSを分解することでアントシアニン合成を抑制するという可能性を検証するため、イネF-box遺伝子を過剰発現するR10933でのCHSタンパク質量を抗CHS抗体を用いたウエスタンハイブリダイゼーションにより調べたところ、R10933では野生型と比べてCHSタンパク質量が極端に少ないことが明らかとなった。シロイヌナズナのF-box相同遺伝子を過剰発現させても葉柄や花茎基部のアントシアニン量が減少することを見出しているが、この形質転換植物でもやはりCHSタンパク質の量は強く抑制されていた。また、大腸菌でGST融合F-boxタンパク質とHisタグ融合CHSタンパク質を発現させ、in vitro pull down assayを行ったところ、F-boxタンパク質とCHSタンパク質との相互作用が検出された。これらの結果は、アントシアニンの抑制がCHSタンパク質の分解による可能性を支持する。さらに、F-box遺伝子によるアントシアニン抑制機構の生理的意義を明らかにするため、公表されている種子成熟時のマイクロアレイデータを利用してシロイヌナズナの相同遺伝子の発現解析を行った。その結果、シロイヌナズナのF-box相同遺伝子はCHSの発現に遅れて種皮で発現することを見出し、F-box遺伝子はアントシアニン合成の終了時に機能することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度の計画では、(1)F-box遺伝子過剰発現植物におけるCHSタンパク質の測定、(2)in vitro pull down assayによるF-boxタンパク質とCHSタンパク質の結合の検出、(3)シロイヌナズナF-box相同遺伝子の発現解析を予定していた。いずれの実験にも着手したところ、順調に進展し、おおむね当初の想定通りの結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、概ね当初の計画に沿って推進していく予定である。すなわち、(1)アントシアニン抑制メカニズムのさらなる解析、(2)アントシアニン抑制の生理的役割の解明、(3)この遺伝子を利用した花色の人為的に操作についての3つの側面から研究に取り組む。(1)については、主に、CHSタンパク質がユビキチン化されるかの検証を行う。(2)については、シロイヌナズナF-box遺伝子のさらなる発現解析や機能欠損変異体の解析に取り組む。(3)については、ペチュニアへのF-box遺伝子の導入を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、主に、CHSタンパク質のユビキチン化の検出や、シロイヌナズナのF-box相同遺伝子の発現解析、ペチュニアの相同遺伝子のクローニングに取り組む予定であり、これらに必要なキット、試薬類および実験操作に必要な器具類を購入する。また、学会への参加も予定している。
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