研究課題
ソバは栽培面・品質面で優れた特性を有する作物であるが、深刻なアレルギーを引き起こす場合があり、その原因物質(アレルゲン)を同定し取り除くか低減化することが強く求められている。これまでに、主要な種子貯蔵タンパク質で複数のサブユニットから構成される13Sグロブリンのβ鎖が主要アレルゲンとして同定されている。また、IgE抗体との反応性が13Sグロブリンのサブユニットごとに異なることが示唆されている。従って、13Sグロブリンのサブユニット組成を変えることでアレルゲン性を改善できる可能性が示唆されているが、詳細は不明であった。我々は、13Sグロブリンにはそのα鎖に0-6回反復された挿入配列を有するサブユニットがあること、また、その反復配列の有無により、アレルゲン性との関連が指摘されているトリプシン消化性が異なることを明らかにした。本研究では、ソバ種子の優れた特性を損なうことなくアレルゲン性を低下させることを目指し、13Sグロブリンの構造・組成変動を詳細に解析することで、それらの基礎的知見を得ることを目的とした。約14万種のクローンからなるソバゲノムライブラリーから13Sグロブリン遺伝子を有するBACクローン22種を同定した。さらにその中から合計17種の遺伝子を同定して塩基配列を解読した(塩基配列は日本DNAデータバンクに登録済み)。最終年度は、反復配列の多様性とそれらが二次構造を取り得る可能性を明らかにし、反復配列が翻訳領域の中で増加してきた機作について考察した。特に、多くの反復配列が45bpを基本単位としていたのに対し一部の反復配列がCGGまたはAGAの3bpを余分に有していたことに着目し、それらが高次構造の変化に与える影響を明らかにした。一方、自殖性の近縁種ダッタンソバを用いて、13Sグロブリンのサブユニット組成が環境条件にどのように応答するのかを解析するための実験系を構築した。
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Food Chemistry
巻: 155 ページ: 192–198
10.1016/j.foodchem.2014.01.047