研究課題/領域番号 |
23580022
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山本 由徳 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (00093956)
|
研究分担者 |
宮崎 彰 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (00304668)
河野 俊夫 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (60224812)
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (00532160)
田中 伸幸 公益財団法人高知県牧野記念財団, その他部局等, 研究員 (40393433)
|
キーワード | 食用カンナ / 系統 / バイオマス / デンプン / 利用開発 / 国際情報交換 / ベトナム |
研究概要 |
我が国西南暖地への食用カンナ導入に当たり,現在保有している系統[台湾産赤系統(2倍体)(以下,台湾赤),台湾産緑系統(3倍体)(同,台湾緑),ベトナム産赤系統(3倍体)(同,ベトナム赤)およびパプアニューギニア産系統(2倍体)(同,パプア)]のバイオマス,デンプン生産性の比較を,高知県沿岸平坦部 (南国市篠原地区:標高8.5m,以下南国と表記) と中山間地 (長岡郡大豊町怒田地区:標高520m,以下大豊と表記) で行った.前年度の試験結果を参考に,植え付け時期は5月中旬(南国),下旬(大豊)とし,前年度と同様の栽培管理下で生育させ,それぞれ11月下旬と中旬に収穫した. 生育期間(5~11月)の平均気は,大豊で南国より約4.8℃低かった.収穫期におけるha当たりの地上部と根茎の生重は,南国と大豊でそれぞれ87~115t,42~80tと71~76t,30~65tで,両圃場で台湾赤が他の3系統よりも根茎生重が有意に高かったが,地上部生重には系統間に有意差はなかった.また,圃場間では地上部生重は大豊に比べて南国で有意に高かったが,根茎生重には有意差は認められなかった.根茎のデンプン収量は,南国では2.5t/ha前後で系統間差異はなく,台湾赤を除き大豊に比べて高かった. サイレージ化食用カンナを高知系褐毛和種に給餌したところ,飼養期間中の増体重,飼料摂取量,飲水量は,黒毛和種の飼養標準と同等であったが,糞尿排出量は大きく減少した.カンナ給餌区は無給餌区と比べ,1日当たりの飼料摂取量,糞尿排出量,および増体量に差は認められなかった. 食用カンナ・デンプンを小麦粉と混合したフェットチーネパスタは,色調は小麦のみの場合に比較し,くすんだ色を呈し,やや硬い食感となるものの,官能評価では,つや,なめらかさ,および匂いの評価において,小麦のみで作成したパスタよりも良い評価を得た.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保有している食用カンナ4系統のバイオマス,デンプン生産性を,当初の計画である高知県沿岸平坦地のみならず,中山間地においても評価することができた.また,食用カンナサイレージの飼料化試験を進め,本サイレージ給餌による増体量をはじめとする諸特性の評価を行うことができた.また,食用カンナ・デンプンの食品開発に向けて,小麦粉との混合による食感に優れるパスタ麺製造の可能性を示した. 食用カンナの栽培・利用が世界で最も盛んであると思われるベトナムを再訪し,中山間地での栽培の現状を明らかにするとともに,デンプン抽出工場,製麺工場を訪問し,デンプンの抽出方法や製麺方法についての情報を収集した.
|
今後の研究の推進方策 |
前年度及び従来の予備試験の結果から,西南暖地に有望と考えられた系統を選抜し,平坦部(南国市:標高約10m)と中山間部(大豊町:標高約520m)の休耕水田において,異なる作期を設けて栽培し,バイオマス,デンプン生産性への影響について検討する.また,昨年度に続き,保有食用カンナ系統のバイオマス,デンプン生産性の系統間差異を検討する.食用カンナサイレージの飼料評価を行うとともに,麺類を中心に食品開発の可能性を試みる. 得られた成果を関連学会等で公表する.
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成25年度)は,設備・備品の購入予定はない.食用カンナ栽培関連資材,サンプル植物体の成分分析,食品開発用の薬品類やガラス器具類などの消耗品やサイレージ給餌調査関連の消耗品類を申請する.また,成分分析やデンプン抽出,生育・収量調査補助(謝金)経費と学会での成果発表経費についても申請する.
|