研究課題/領域番号 |
23580028
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 哲也 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10153727)
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キーワード | スズラン / マイヅルソウ / 種子発芽 |
研究概要 |
本申請で対象としたスズランとマイヅルソウの種子は,予備実験で,野外では種子が散布されてから地上に緑のシュートを出現させる(出芽)までに,2回の冬を要することがわかっているので,本年は前年の実験を継続した。 野外実験における胚成長,発根および出芽のフェノロジー:種子を不織布で作った24の袋に入れて植木鉢に埋土し,毎月1袋を堀りあげ,ミクロトームを用いて種子の切片を作成した後,マイクロメータを装着した光学顕微鏡で胚の長さを測定した。発根時期の調査では不織布に種子を入れたものを24準備して,毎月1つずつ堀りあげて発根率を調査した。両種の種子共に,秋に種子が散布された後,第1回目の冬を越した初夏に胚が成長して発根したが,その後地下で芽を形成したまま成長を止めシュートは地上部に出現しなかった。おそらく,2回目の冬を経た後にシュートが出現すると思われる。 室内実験における発根のための温度と光要求:プラスチックシャ-レにロ紙を敷いた発芽床に播種した。発芽床は蒸留滅菌で湿らせて,パラフィルムで密封して水分の蒸発を防いだ。光条件は,明(1日12時間蛍光灯の光を照明)と暗(シャーレを2重のアルミ箔に包んで月1回程度,緑色光下で調査)を設けた。温度勾配恒温器や低温恒温器を用いて,種子散布後の野外の秋→冬→春→夏→秋を再現した温度区を基準とし,基準温度区の期間や温度を様々に変化させた処理区を設定した。 設定した温度条件のうち,冬→春→夏の温度を再現した区でのみ,発根が見られた。つまり,野外実験で第1回目の冬を経た後に発根した現象は,室内実験で示された,発根のためには低温によって休眠が打破される必要があることで説明できる。スズランの種子では明区ではほとんど発根せず,暗区で90%の発根率を示した。またスズランとマイヅルソウの両種子ともに変温よりも恒温で高い発根率を示す傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スズランの種子もマイヅルソウの種子も、H23年の秋に実験をセットしたが、複雑な休眠を要するため、発根には長期間を要している。野外では、両種共にH24年の夏に発根したことが確認され、H25年の春には,地上部に出芽すると推測される。室内実験では,マイヅルソウでは採取できた種子の数が少なかったため,供試粒数を予定より少なくせざるを得なかった。しかし,全般としてほぼ目的の実験結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
すでに,スズランの種子については,実験DATAが蓄積された部分から順次まとめに入っており,一部は,アメリカのケンタッキー大学と中部テネシー州立大学,そしてインドのガーホール大学の研究者達と議論しながら論文原稿を作成中であり,ほぼ完成の段階に達している。 最終年度(次年度)のうちに,残りの調査の継続とDATAの解析を行い,Annals of Botany または American Journal of Botany に投稿して掲載されることを望んでいる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、学会発表のための旅費,論文の英文チェックのための料金,論文投稿料,論文の別刷代金の他,残されている実験の継続のための消耗品費を必要とする。さらに実験に使用している恒温器の中には、年式の古いものがあるため、新規の機器との交換または修理費が必要になる。加えて、蓄積されつつあるDATAを解析するための統計用ソフトを購入する予定である。
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