前年度までに,室内での恒温器とLED照明装置を用いた,発根条件を明らかにするための実験,ならびに野外実験での胚生長,発根のフェノロジー調査を完了した。今年度の計画は,スズランとマイヅルソウ種子の出芽フェノロジーの調査を完了した後,直ちにまとめて国際学会誌に発表することであった。 スズランもマイヅルソウも播種後,2回の冬を経た5月から6月にかけて(播種後20か月から21か月後)に子葉が地上部に出現した(出芽)。スズランでは80%以上の種子が出葉したが,マイヅルソウでは約30%の出芽率に留まった。マイヅルソウの出芽率が低かった理由は不明である。ただし,室内実験においても種子の腐敗率が高かったことと,マイヅルソウは種子も生産するが,地下茎による繁殖が盛んであることから,本来的に種子の活力が低いのではないかと思われた。 これまでの実験結果から,スズランもマイヅルソウも,播種後1回目の低温(冬)を経て発根し,その年の夏に根系がある程度発達し,さらに2回目の低温(冬)を経て出芽に至る,deep simple double morphophysiological dormancy (以下,double dormancy)とうい複雑な休眠性を持つことが明らかとなった。しかし,過去に報告されたdouble dormancyを持つ種子とは異なり,発根の後に胚が生長した。 このようなスズラン種子の休眠特性をもとに,これまでの種子休眠の分類体系に加えて新たな休眠の種類を提案した論文をAnnals of Botanyに投稿したが,再投稿を求められた。共著者であるこの分野における第一人者達との長期にわたる議論を経て現在も修正中であるが,4月中には再投稿できる見通しである。
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