研究課題/領域番号 |
23580029
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (50301875)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
植物の受精・胚発生の仕組みを明らかにするための手法として、単離した生殖細胞を融合させる試験管内受精の研究に取り組み、生殖細胞を操作する技術を開発してきた。高等植物の重複受精の産物である胚乳は栄養貯蔵のために機能分化し、その役割を果たすと植物体になることなく崩壊する運命にあるユニークな組織である。極核を擁する中央細胞は、卵細胞と同じ大胞子母細胞に起源を持ち、減数分裂後に残存する単一細胞に由来することから遺伝的背景は同一である。しかしながら、配偶子形成の過程で、二つの核(極核)を持つことから倍数性が異なる。 接合子と遺伝的に同一な胚乳組織の特異性が受精後のどの時点で決定されるのかという疑問に答えるひとつの手段としてハスカップの発生初期の胚乳を培養し、その分化全能性、すなわち植物体再生能力について調査した。これまでの研究で開発した生殖細胞の操作技術を応用し、微小な胚乳のみを摘出して培養を行ったところ、カルスを経由して植物体に再生させることができた。この結果は、従来、栄養貯蔵器官のみにしか分化しないと考えられていた胚乳が遺伝的な可塑性を持ち、胚と同様に植物体になる能力を保持していることを明らかにしたものであり、胚乳が分化能を持たないという概念を改めるものである。 この現象の解明のために、胚乳分化のメカニズムの解明を試みている。近年、胚乳はゲノムインプリンティングの制御を受けることが明らかになってきた。花粉由来のゲノムと胚珠由来のゲノムが異なる遺伝子発現の制御を受けており、おそらくこの事象は胚乳を特徴づける重要な鍵になっていると予想される。そこで本研究では、これまでに確立した胚乳からの植物体再生系と、ゲノムインプリンティングの解析を組み合わせ、胚乳分化のメカニズムを明らかにする。本年度はFIE遺伝子に着目し、ハスカップの胚乳培養過程における発現パターンについて基礎的な解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに実験は進んでいる。また、胚乳の再生について研究成果を取りまとめ、以下の論文を公表することができた。Hoshino Y., Miyashita T, Thomas TD (2011) In vitro culture of endosperm and its application in plant breeding: Approaches to polyploidy breeding. Scientia Horticulturae 130: 1-8 リアルタイムPCRによるインプリント遺伝子の発現解析の基盤技術を開発することもできたことから、おおむね順調に研究は進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
ハスカップの胚乳形成に関与するインプリント遺伝子のクローニングと発現解析について重点的に解析を進める。 植物では胚乳のみでゲノムインプリンティングの現象が見つかっており、インプリント遺伝子としてシロイヌナズナからFWA、MEDEA、FIS2(fertilization independent seed 2)、FIE(fertilization independent endosperm)が単離されている。これらの遺伝子は、母親由来のゲノムのみで活性化され、胚乳形成に深く関わっていると考えられる。平成24年度はハスカップにおけるこれらの遺伝子のクローニングを進める。 RACE法により、既知のインプリント遺伝子を参考にdegenerate primersを作成し、ホモログの単離を試みる。 単離した遺伝子を用いて、胚乳培養時のインプリント遺伝子の発現解析をリアルタイムPCRを用いて行う。in vivoにおける胚乳発達過程と胚乳培養時におけるインプリント遺伝子の発現解析を行い、発現パターンの比較を行う。発現パターンの比較から、培養時における胚乳の脱分化のタイミングと再生時におけるインプリント遺伝子の関与について解析を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り、物品費は研究に使用する消耗品費として用いる予定である。 旅費については、国内の学会において研究成果を発表するために使用する。また、研究打ち合わせ、情報収集のための国内旅費としても使用予定である。 ほか、研究補助のための謝金、論文投稿のための英文校正、分析依頼費等を見込んでいる。 経費の節約の結果生じた使用残(177,523円)について、遺伝子発現の解析に用いる試薬を購入して実験の反復回数を増やし、より精度の高い実験データを取得するために使用する。
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