花色の発現にはアントシアニンのアシル化および配糖化が重要な役割をもつことが知られてきたが、その仕組はほとんど解明されていなく、アシル化、配糖化を担う酵素やその遺伝子もほとんど単離されていない。そこで平成23年度はまずロベリアを材料に新規のアシル化酵素や配糖化酵素の遺伝子の単離を試みた。また、得られた遺伝子の機能についてウイルスベクターによるRNAサイレンジンクを利用した解析を行うことから、キュウリモザイクウイルス(CMV)ベクターが実際にロベリアで機能するかについても先行実験を行った。 青花ロベリアを材料として、配糖化酵素遺伝子に共通に見られるPSPGモティーフおよび推定される機能ドメインの塩基配列をもとにプライマーを設計した。このプライマーおよびロベリアから抽出したmRNAを用いてRT-PCRを行い、ターゲット遺伝子のcDNAを増幅した。得られたPCR産物のクローニングおよびシークエンス解析を行ったところ、配糖化酵素遺伝子と思われる数クローンを単離することができた。また、アシル化酵素に関しては、アシル化酵素に特徴的なBAHD配列を基にプライマーを作製し、同様にしてロベリアからアントシアニン・アシル化酵素の単離を試みた。その結果、アシル化酵素に関しても数クローンを得ることに成功した。得られたクローンが実際に目的とする酵素遺伝子であるかを判定するために、今後は大腸菌あるいは昆虫細胞でタンパク質を発現させてその機能を解析する必要がある。 また、ロベリア花弁で青色を発現するための重要な遺伝子であるflavonoid 3' 5'-hydroxylase遺伝子の部分配列をCMVベクターに挿入した。この組換えウイルスをロベリアに感染させたところ花弁で青色の退色が観察された。一方、部分配列を挿入していないCMVベクターを感染させても花色の変化はみられなかった。このことから、CMVベクターがロベリアの花色関連遺伝子の解析に利用できることを確認できた。
|