研究実績の概要 |
西洋なしには樹上で追熟しない現象がある。この原因として、樹体から果実への阻害物質(Tree factor, 樹体要因)の移行説が40年以上前から仮定されていた。この阻害物質の正体は植物ホルモンの特にジベレリンとの仮説を検証するために、樹体から果実へ移動する樹液中の植物ホルモンを分析することを試みた。 太い枝から果梗枝を経由して果実は接続している。そこで、この果梗枝が植物ホルモンの採取に最適であるが、短い枝であり、果実生産に直結するので多量の採取もむつかしい。そこで、今回は十分な長さがあり、果実生産に直結してないので多量の採取も容易な徒長枝を材料とした。方法は徒長枝を水に浸漬して、水中に拡散する、拡散性植物ホルモンを分析した。 分析結果は、次の通りである。単位は、pmol/時間/個体である。アブシジン酸(ABA):8.7、インドール酢酸(IAA):27.1、ジベレリン類(GAs)はGA1;3.6・GA4;31.5、サイトカイニン類(CKs)はゼアチン(Z);9.8・イソペンテニルアデニン(iP);27.1、ジャスモン酸類(JAs)はジャスモン酸(JA);75.4・メチルジャスモン酸(MJA);21.3。多くの場合、IAAを1とすると、ABAが10、CKsが0.1、GAが0.01の濃度である。従って、この場合はGA4が相対的に非常に高い値となり、GAが阻害物質である仮説を支持する結果となった。
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