研究課題/領域番号 |
23580038
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊二 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60372728)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | ブドウ / 香り / 3-メルカプトヘキサノール / 甲州 / 栽培技術 |
研究概要 |
本研究は、日本に土着した醸造用ブドウ品種‘甲州’の特徴香3-メルカプトヘキサノール(3MH)について、ブドウ果実における3MH前駆体の生合成経路やその生合成を調節する分子機構などの未だ解決されていない基礎学問的な課題を解決する。次に、その知見をもとに、ブドウ果実に3MH前駆体を多く蓄積させるためのブドウ栽培技術を開発する。本研究の成果は‘甲州’ブドウ果実の香りを向上すると同時に、国外輸出が本格的に始まった‘甲州’ワインの品質向上にも貢献することが期待される。研究計画初年度となる平成23年度は、3MH前駆体の生合成過程の全容解明を主に実施した。現在提唱されている3MH前駆体生合成過程の一部は、反応生成物の化学構造式から単に推定されたものである。すなわち、システニルグリシン抱合体がブドウ果実およびワイン中から検出されたという報告は無く、グルタチオン-S-トランスフェラーゼおよびγ-グルタミルトランスフェラーゼが3MH前駆体生合成反応を触媒するという科学的根拠もない。これらを解明することが当該年度の目標である。具体的には、3MH前駆体生合成系の中で未解明とされる経路のうち、1.システニルグリシン抱合体の同定および定量、2.ブドウ果実に含まれるシステニルグリシン抱合体の定量、3.in vitroにおけるグルタチオン-S-トランスフェラーゼおよびγ-グルタミルトランスフェラーゼの触媒活性および4.in vivoにおけるグルタチオン-S-トランスフェラーゼおよびγ-グルタミルトランスフェラーゼの触媒活性、を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的実施項目として挙げた4項目について、概ね順調に進んでいるが、in vitro におけるγ-グルタミルトランスフェラーゼの触媒活性については、計画を中止した。その理由として、γ-グルタミルトランスフェラーゼは1つのポリペプチド鎖として合成された後、2分子に切断され、その2分子が重合することにより活性型γ-グルタミルトランスフェラーゼとして酵素活性を発揮する。当初計画した大腸菌の系では活性型γ―グルタミルトランスフェラーゼを得ることは不可能であったため、本計画を中止した。これを補足する研究として、in vivo(植物細胞内)におけるγ-グルタミルトランスフェラーゼの触媒活性を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、平成24年度は、3MH前駆体の生合成を調節する分子機構を解明し、3MH前駆体生合成系を活性化する「鍵」を明らかにすることを目指す。具体的には、環境ストレス負荷による3MH前駆体生合成系の活性化を検討する。この研究項目は平成23年度に一部実施済みである。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として、267,024円が計上される。当該研究費が生じた理由は、本年度予定していた国際学会への参加を取りやめたためである。この研究費を含めた次年度の研究費の使用計画は次のとおりである。3MH前駆体の分離および定量に必要な消耗品として、HPLC分析に必要な有機溶媒とHPLCカラム、3MH前駆体生合成過程の解明に必要なブドウ培養細胞の培養用試薬およびリアルタイムPCR用試薬、プラスチック器具類を消耗品として購入したい。設備備品の購入は予定していない。その他、年1回分の国内旅費および外国旅費、年1報分の論文投稿に必要な英文校閲費(謝金等)および論文発表に必要な研究成果投稿費(その他)を予定している。
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