研究課題/領域番号 |
23580038
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊二 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (60372728)
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研究分担者 |
藤田 景子 県立広島大学, 生命環境学部, 助教 (50467726)
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キーワード | ブドウ / 香り / 3-メルカプトヘキサノール / 3-メルカプトヘキサノール前駆体 / 甲州 / ナイトハーベスト / グルタチン-S-トランスフェラーゼ / γ-グルタミルトランスフェラーゼ |
研究概要 |
本研究は、日本に土着した醸造用ブドウ品種‘甲州’の特徴香 3-メルカプトヘキサノール(3MH)について、ブドウ果実における3MH前駆体の生合成経路およびそれを調節する分子機構などの未だ解決されていない基礎学問的な課題を解決するとともに、それらの知見をもとに、ブドウ果実に前駆体を多く蓄積させるためのブドウ栽培技術を提案することを目的とする。近年、ブドウ栽培にとって比較的温暖な地域では、収穫したブドウが熱くなり品質が低下することを防ぐため、ブドウを冷たい状態で収穫する「夜収穫(ナイトハーベスト)」が行われている。圃場試験において、果実中の3MH前駆体の含有量は、深夜から早朝にかけて増加し、日中に減少することを明らかにした。この「日周性」は‘甲州’に限らず、他の白ブドウ品種‘シャルドネ’、‘ソーヴィニヨン・ブラン’、‘リースリング’でも確認された。一方、3MH前駆体の生合成経路に関与する鍵酵素グルタチン-S-トランスフェラーゼおよびγ-グルタミルトランスフェラーゼの遺伝子発現は3MH前駆体蓄積と同様の日周性を示さず、朝方と夕方に遺伝子発現量が高くなる傾向を示した。以上の結果から、果実への3MH前駆体蓄積に認められる日周性は生合成系が日周性を示すために作り出されるのではなく、未知の分解系あるいは代謝系が関与することが示唆された。現在、3MH前駆体に関与する新たな代謝系を解析している。この未知な代謝系を明らかにすることができれば、ブドウ果実中の3MH前駆体を調節する技術の開発につながるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3MH前駆体の生合成経路を調製する分子機構のひとつとして、日周性が関与する点を圃場レベルで明らかにし、その分子機構の解明を試みた。その結果として、3MH前駆体の生合成系には日周性を引き起こす未知の分解系あるいは代謝系が存在することを明らかにした点は評価されると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、3MH前駆体生合成量を増大する栽培環境の特定を行うとともに、「3MH前駆体生合成系を活性化する鍵」を特定する。現在のところ、乾燥ストレスおよびUV処理が候補である。加えて、平成25年度で新たに認められた「果実の3MH前駆体蓄積に日周性を付与する未知の分子機構」についての検討も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた理由は、海外出張を取りやめたこと、および、論文投稿に至らなかったためである。 「果実の3MH前駆体蓄積の日周性」に関与する分子機構を解明するために、遺伝子解析用試薬類が必要であるため、これを新たに消耗品として購入したい。この購入費は次年度使用額および消耗品費から回すことにする。設備備品の購入は予定していない。その他、年1回分の国内旅費および海外旅費、年1報分の論文投稿に必要な英文校閲費(謝金等)および論文発表に必要な研究成果投稿費(その他)を予定している。
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