研究課題/領域番号 |
23580039
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
本橋 令子 静岡大学, 農学部, 准教授 (90332296)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プロテオーム / プラスチド / トマト / 分化 |
研究概要 |
トマト果実は成熟するに従い光合成を行うクロロプラストからカロテノイドを蓄積するクロモプラストに分化する。本研究は、Micro-Tom果実や白と黒の果実色を持つHeirloomトマト栽培品種(White Beauty、Black tomato)を用いて、クロモプラストに特異的なタンパク質を多数同定し、クロモプラストのプロテオームデータを得て、クロモプラスト分化メカニズムの解明、分化の鍵タンパク質の特定を目的としている。2次元電気泳動法を用いて、トマト果実の成熟に伴い変動するプラスチドタンパク質を同定した。同様に、白や黒の果色系統のクロモプラストプロテオームデータを取得し比較した。その結果、plastid lipid associated protein CHRC、Temperature Induced Lipocalin (TIL)とHarpin binding protein1に発現量などの違いが観察された。 カロテノイド関連のタンパク質として、プラスチド特異的に存在するplastid lipid associated protein CHRCは、2次元電気泳動で可視化できるほど大量に赤色果実で蓄積していることから、カロテノイド蓄積とクロモプラスト分化に重要な役割を担っているタンパク質であると考えられた。カロテノイドを蓄積するMicro-Tom(Red)、Black tomatoと、カロテノイドを蓄積しないWhite Beautyの間でTILとHarpin binding proteinの翻訳後修飾の違いが見られたことから、lipocaline類の翻訳後修飾は また、カロテノイドの合成や蓄積に関係している事が解った。 オレンジ果色のEMS変異体の原因遺伝子を同定したが、既存の変異体 tangerineと同じ原因遺伝子(CRTISO)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していたタンパク質を蛍光ラベルする2D-DIGEは、効率よくタンパク質をラベルする方法を確立できず、通常の2次元電気泳動を用いたが、タンパク質の増減や翻訳後修飾による移動度の変化が観察された。また、それらのタンパク質を同定する事もできたので成果は大きいと考える。 さらに、オレンジ果色のvo mutant原因遺伝子を決定した。残念ながら既存の変異体と同じ原因遺伝子であったが、他の白や黒果色のトマトの原因遺伝子同定に応用する事ができる成果である。 上記のように、当初の計画の8割は達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、果実成熟にともないリン酸化されるプラスチドタンパク質の同定や、他の翻訳後修飾されるプラスチドタンパク質の同定を試みる。プラスチドタンパク質からリン酸化タンパク質の濃縮の方法を確立し、LC-MS/MSにより同定する。平成23年度の研究成果により得られた発現量などに変化があった3つのタンパク質の機能解析を進める。 また、白果色のトマト栽培系統のアレリズムテストを行ない、白果実色のトマトの原因遺伝子の同定を試みる。White Beautyの原因遺伝子とMicro-Tomの赤色果実のクロモプラストタンパク質の違いとの関連を考察する。 さらに、ナス科パプリカのクロモプラストプロテオームデータの取得を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
900,000円の消耗品経費は、遺伝子クローニング試薬やプロテオーム試薬、トマト栽培試薬の購入のために使用する。 また、学術研究員を雇用し、週に数時間ほどトマト栽培管理を行なってもらうことにより、環境ストレスの少ないトマト果実を得る。 国内学会における本研究の成果発表として、3月に岡山大学で開催される植物生理学会に参加する。また、プロテオーム研究集会や園芸学会にも積極的に参加し、プロテオーム解析の最新技術の習得やトマト果実生理の知識蓄積に努める。
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